漢方薬の味のお話〜「まずい!!」って本当?〜

漢方

漢方薬が敬遠される理由の一つが“味”です。
一般的となったエキス剤の多くが顆粒です。煎じ薬に比べれば抜群に飲みやすくなっているとはいえ、独特の風味があります。
今回は漢方薬の“味の”お話です。

漢方薬はやっぱり“まずい!”?

ハッキリ言って、決して美味しくないです。
ですが、証(その方の症状や体質)に合った漢方薬なら「美味しい」と感じることがあります。
私の経験上、「おいしい」とまでいかなくても、風味が苦にならないことが多いです。
そして、おいしいと感じたり、苦にならなかった漢方薬をのんで「あれ?こんな味だった??」と思った時は、漢方薬の変更や中止を考える時だともいわれています。

風味は構成される生薬によって変わってきます。
生薬の中には漢方薬として使われるだけでなく、甘味料として用いられているもの(甘草かんぞう)、香辛料として用いられているもの(桂皮けいひ又は桂枝→シナモン・山椒等)、食材でもあるもの(蘇葉そよう→シソ・大棗たいそう→ナツメ等)があります。こうした生薬で構成されている漢方薬は比較的のみやすい味です。
反対に苦味や酸味の強い生薬(呉茱萸ごしゅゆ黄連おうれん等)が多く含まれている漢方薬は、のみにくいものが多いです。それでも「よく効いた!」と仰る方には苦にならない味のようです。

一般的に「のみにくい」「のみやすい」と位置づけられている漢方薬をあげていきます。

のみにくいとされている漢方薬は?

例えば、黄連解毒湯おうれんげどくとう。苦い生薬である黄連を含んでいます。身体の“熱”を冷ます漢方薬です。
皮膚や胃腸のトラブル等に用いられます。冷たい水で飲むと良いといわれています。

呉茱萸湯ごしゅゆとうは、先程あげた呉茱萸を含む生薬です。頭痛に用いられることが多いです。
のみにくい漢方薬の代表格ですが、「おいしい」「そんなに苦にならないよ」と仰る片頭痛持ちさんも多いです。

その他、ニキビや慢性副鼻腔炎に用いられる荊芥連翹湯けいがいれんぎょうとう、喉の痛み・炎症に用いられる銀翹散ぎんぎょうさん駆風解毒湯くふうげどくとうものみにくい漢方薬です。


実は、花粉症で一躍有名になった小青竜湯しょうせいりゅうとうも、どちらかというとのみにくい漢方薬です。
酸味のある五味子ごみしが独特の風味をだしているように思われますが、味に対する感想は患者さんによってかなり違います。
私自身は、鼻炎の症状が強い時には味が全く気にならず、落ち着くにつれて酸味が気になってきます。(全く個人的な感想ですが。)

比較的のみやすい漢方薬は?

例えば、甘麦大棗湯かんばくたいそうとう。美味しいともいえる漢方薬です。
構成生薬は甘味料としても用いられる甘草かんぞう小麦しょうばく(コムギです)、大棗たいそう(ナツメです)のみ。甘い漢方薬です。
神経の昂りに効果があります。子供の夜泣きや疳の虫(いわゆる“ギャン泣き”や癇癪)にも用いられます。

甘麦大棗湯と同様、子供によく用いられる小建中湯しょうけんちゅうとうものみやすい漢方薬の一つです。甘草や膠飴こうい(麦芽の飴)を含む甘みのある漢方薬です。
子供の虚弱体質の改善に使われます。虚弱体質の原因となる脾胃(≒消化器)を立て直してくれる漢方薬です。
息子の幼い頃のお腹のトラブルは、殆ど小建中湯で対処できました。

甘みのある漢方薬を2つのご紹介しましたが、証が人それぞれであるのと同様、のみやすさも人それぞれです。
私自身は、桂枝茯苓丸けいしぶくりょうがんが一番のみやすいです。婦人科領域(だけではないのですが)で活躍する血の巡りを良くする薬です。シナモンの風味です。ですが、シナモンが苦手な方は桂枝茯苓丸に限らず、桂枝・桂皮が入っている漢方薬は、のみにくいと感じるかもしれません。

上手にのむ工夫は?

証が合っているとお口に合いやすいのなら、「おいしくない」「不味い」と感じる漢方薬は合っていないのでは?…と思われる方もいらっしゃいますが、そうとは限りません。
子供は特にそうですが、経験のない味覚は受け入れにくいものです。
渋々のんでも、それで体調が良くなれば「のもう!!」という気にもなれそうですが、「我慢して」「頑張って」のむという行為自体、「その人にとって程よい状態をめざす」漢方の信条から少しずれてしまう気もします。

では、上手にのむ工夫はないものでしょうか。
●工夫①オブラートに包む・服薬ゼリーを使う
→オーソドックスな方法ですね。
ただし、漢方薬の一回量はそれなりなので、飲み込みやすい量に分けてオブラートに包みます。
服薬ゼリーの場合、全体を包み込むようにすると良いです。色々な味がありますが、風味のある漢方薬は、チョコ風味がマスクしやすいようです。

●工夫②食品に混ぜる
子供にお薬を飲ませる場合に用いることの多い方法です。
漢方薬の風味をマスクするには、ほろ苦さのあるものと混ぜるのがオススメです。
チョコクリーム・ココア等が使いやすいです。
アイスクリームは、抗生物質等の一般的な薬を子供に飲ませる時にも使われますが、漢方薬の場合はバニラアイスよりもクッキークリームアイスの方が美味しく?のんで(食べて?)もらえるようです。

工夫③剤形を変える
漢方薬は顆粒だけではありません。全てではないですが、錠剤やカプセル剤の他、ゼリータイプや液体タイプがあるものも。
是非、薬剤師や登録販売者にご相談ください。

最後に

如何でしたでしょうか。
「のめない…」と仰る患者さんや小さな子供相手に苦労される親御さんに色々な工夫をお伝えするのですが、どれが上手いくかは人それぞれで、「これが一番!」な方法となると難しいです。
私が息子の服薬で困った経験がないのが、一押しがない理由かもしれません。
我が息子は、小さな頃から平気で漢方薬の顆粒を口の中に放り込んでいました。気に入った漢方薬を口の中でジャリジャリさせて笑っているぐらいです。(後の歯磨きが大変でした…。)
子供だから無理という訳ではない、でも非常にレアなケースです…。

そして、子供でも大人でも、どんな工夫をしても、やはり「漢方薬、のめないよ…」という方がいらっしゃいます。
無理して苦行のように服用を続けるのは、ストレスのもととなるかもしれません。漢方の観点からは、ストレスは“気”(≒エネルギー)が滞る“気滞きたい”の要因となります。
漢方薬という選択肢しかなかった昔ならいざ知らず、今では他にも選択肢が沢山あります。
西洋薬・サプリメント・養生…漢方薬にこだわらず、不調が改善すればそれで良いかと。
でも、それでも不調が改善できず、辛い毎日なのであれば…。
その時はもう一度、漢方薬に振り向いてもらえたら嬉しいです。

コメント

  1. まずい、おいしい、確かにありますね。
    うちは夫がたまに、十全大補湯を煎じてるんですが、本当に臭くて…(笑)
    夫は全く臭くない、落ち着くと言いますし、味も私は苦手ですが、彼は美味しいと言ってます。

    黄連解毒湯、苦いですよね。
    私はアトピー体質で、たまに湿疹がひどい時に温清飲を飲むんですが、苦いです(^-^;
    顆粒は大丈夫ですが、煎じ薬はやっぱりキツイです。

    呉茱萸湯、たまに飲みますが(顆粒)、まずいと思ったことはないです。
    飲みにくい薬だったんですね…(笑)

    銀翹散は、症状がある時に飲みますが、いつ飲んでも苦いです…(^-^;

    • 薬剤師A 薬剤師A より:

      ありがとうございます!

      実は、煎じ薬では私も“美味しい”に出会ったことはありません(^_^;)
      “美味しい!”方も、やはりいらっしゃるのですね(^o^)

      黄連解毒湯と黄連解毒湯ベースの方剤は、飲みにくいですね。大概の漢方薬が大丈夫な息子の唯一苦手な方剤(銀翹散もお湯で溶いてガラガラやっていました)は、荊芥連翹湯です(^_^;)

      人それぞれで、本当に面白いです\(^o^)/

  2. 荊芥連翹湯、配合から苦そうです(笑)
    銀翹散が平気な息子さんがですか。。。
    飲んだことないですが、きっと苦いんでしょうね…。

    私は自分の薬はそこまでまずいとは思わないので(黄連解毒湯系を除く(笑))いろいろあるでしょうね(*^^)v