最初に摂るべきサプリメントは意外にも…「サプリメントの正体」を読んで

薬局から

「あなたは今、サプリメントを飲んでいますか?」
…から始まる、サプリメントの本。


医療機関専用のサプリメントメーカーの代表をされている方の本です。
「サプリメントを飲もう」という本でも「サプリメントは危険」という本でもありません。

サプリメントの問題点を明らかにして、その上で投資に見合った効果が期待できるサプリメントの見分け方や必要なサプリメントの選び方を教えてくれます。

サプリメントの問題とは…

サプリメントの問題点…。
薬局でも感じることです。
「これ、飲んでいるのだけど…」
「これ、飲もうと思うのだけど…」
そんな相談をよく受けます。

本書でも書かれていますが、華やかな広告に惑わされず、冷静に原材料や成分表示を見ることです。

華やかな広告の割には、殆どが賦形剤(錠剤の形にするための物質)等の添加物であったり、既に処方薬で飲んでいる成分が(高い値段の割には)ちょっぴりしか入っていなかったりするサプリメントをよく見ます。

病院での治療よりも医師が処方する薬よりも「何だか良さそう」と思ってしまう患者さん、結構いらっしゃいます。それだけ宣伝が巧みなのでしょうか。

・血圧の安定に良い
・血糖上昇を穏やかにする
・気持ちを安定させる
・運動機能の低下予防に
…様々な文言に惹きつけられますが、個人的には「既に薬で治療している人が飲むべきものではない」と考えています。
薬と飲み合わせの問題もありますし、薬もサプリメントも肝臓や腎臓に負担をかける以上、必要最小限であるべきです。

有効成分が少な過ぎて、効果が疑問な商品。
薬との飲み合わせや過剰摂取で好ましくない効果の恐れのある商品。
…どちらも問題です。

では何を飲む?

本書はサプリメントを否定するものではありません。病気になりたくない人の予防のサポート、医薬品ではカバーしづらい不定愁訴に、栄養の不足が根本原因にある場合に、サプリメントは使われます。

サプリメントは目的別に大別すると次の2種類があります。
①すべての人に必要な基本的な栄養素の補給を目的としてもの
②特殊な機能性を持つ成分を摂取するもの

この考え方、とても大事。患者さんへの説明に使わせてもらおうと思いました。

恐らく、多くの人が②のイメージを持たれているのではないでしょうか。ローヤルゼリーやセサミン(ゴマのサプリメント)、イソフラボン(大豆のサプリメント)等があげられます。

正しい食生活で必要な栄養素が十分に摂れていて、プラスαの効果を期待するのであれば良いでしょう。(その場合も品質の良いものを選ばなくてはいけませんが。)
ですが、「新型栄養失調」あるいは「現代型栄養失調」が増えている昨今、最初に摂るべきサプリメントは①であると、本書では強調されています。

意外かもしれませんが、医学的にも働きや効果が確認されていながら、不足しているのが「基礎的なビタミンやミネラル」なのです。

でも、こっちのサプリメントって地味。
特殊なものほど、華々しくみえるのは世の常でしょうか。
宣伝広告に惑わされず、優先順位の高いものから選ぶことが大事です。

その上でも著者は「殆どの人が最初に選ぶべきサプリメントは品質の良いマルチビタミン&ミネラル」と述べています。
これも「新型栄養失調」の解決の観点からは納得です。
食生活の偏りが原因の栄養失調は単独の栄養素の不足でないことが多いからです。
栄養素の摂取は、バランスが大事です。いくつかの栄養素が十分でも、不足している栄養素が身体の状態に影響し、十分な他の栄養素を効果的に使えなくなります。これを「桶の理論」といいます。

桶の板(栄養素)が揃っていると水(成長や健康)が張れる
短い板(不足の栄養素)があると、水位が下がる

では、「食事の内容に気をつけている」なら大丈夫でしょうか。

食事のとり方にも色々あって…

例えば、家庭で作った煮物とコンビニで買った煮物。
どこが違うのでしょうか。
味つけ?添加物?…それもありますが、栄養価も見逃せないそうです。

食中毒防止の衛生面を優先する調理方法は、家庭での調理よりも大幅に栄養素が流出してしまうそうです。いわゆる“中食”にも同じことが言えそうです。

そして、旬の野菜とビニールハウスの野菜にも、栄養価は変わってきます。

結局のところ、著者は「旬の食材で包丁握って調理を」と。
本当にその通りだと思います。
ただ、それが出来ない世の中になりつつあることも事実かなと。
そういう意味での(品質の良い)マルチビタミンサプリメントということになるのでしょう。

最後に個人的な見解

西洋医学でも漢方でも、人が健康でいられるキーワードは「食う(食事)・寝る(睡眠)・動く(運動)」です。

薬局でサプリメントの相談を受ける場合、私は先ず食生活の様子を伺います。
可能であるならば、出来る限り、栄養は食事で摂りたいものです。食べ物からの栄養素の過剰摂取によるリスクは、サプリメントによる過剰摂取のリスクよりも低いからです。

食事に気をつけた上で、個人的に気になっているビタミン・ミネラルは次の3つです。


ビタミンD…骨の健康を維持するために重要なビタミンですが、それだけではなく免疫機能(感染症に対する抵抗力など)にも深く関わっていることが明らかになっています。日光を浴びることで体内合成されるのですが、紫外線対策の結果か多くの人が不足しているといわれています。

…貧血に関わるミネラルです。思春期・妊娠中・月経のある女性は特に必要であることが知られていますが、他にも気をつけたいのは運動をする人達。汗で失われるのは水分だけではありません。失われるミネラルの中に鉄もあります。さらに、走る・跳ぶで足底に繰り返し衝撃が加わることで赤血球が壊れる為に鉄の需要が高まるのです。

亜鉛…身体(特に皮膚や髪)の細胞分裂や味覚の維持、生殖機能の維持等、様々な機能をサポートするミネラルです。亜鉛を多く含む食材は、牡蠣や豚レバー、牛肉、卵、豆類等がありますが、近年は自然界での亜鉛の量が減り、食材から得られる亜鉛は必要摂取量ギリギリといわれています。

…あくまで個人的な見解です。

特殊な機能性をもつ成分については、それぞれの描く健やかさで選んでもらえればと思います。
ですが、既に病院で処方された薬をのんでいる人は要注意。基本的にはおすすめできないことが多いです。
ですが、誰でも自分の身体に「何か良いこと」をしたくなるもの。
気になることは、是非薬剤師にご相談ください。

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