学校薬剤師は、例年6月から7月にかけてプールの水質検査を行います。
プールの水質において重要な指標の一つが残留塩素濃度です。
水道水と同様、プールの塩素剤投入について抵抗のある方がいらっしゃいますが、多くの細菌やウイルスに有効で使いやすい薬剤として、塩素剤の右に出るものは中々見当たらないと思います。
プール水の残留塩素濃度は「0.4㎎/L以上であること。また、1.0㎎/L以下である事が望ましい。」とされています。飲料水の基準(0.1㎎/L以上)よりも高い設定です。
塩素濃度が0.4㎎/Lあれば、殆どのウイルス・細菌に対応できるといわれています。
「プール熱」という呼び名で知られているアデノウイルスによる咽頭結膜炎も、基準の残留塩素濃度の管理下ではプール水による感染は起きにくいといわれています。(感染力の強いウイルスであることは間違いないので、脱衣所でのタオル等から感染することは大いにあり得ます。タオルの共用は避ける、手洗いをすることが大切になってきます。)
0.4㎎/L以上…ではありますが、実際は0.7〜1.0㎎/Lになるよう塩素剤の投入を推奨しています。塩素は気温や天候で急速に消耗してしまうからです。
幼稚園のプールで0.7㎎/Lあった残留塩素が1時間もたたないうちにゼロになっていた事がありました。ですので、先生方には定期的な残留塩素濃度のチェックをお願いしています。
プールの消毒に効果的な塩素剤ですが、皮膚への刺激は否めません。基準に「1.0㎎/L以下である事が望ましい」とある理由でもあります。
アトピー性皮膚炎等、皮膚の弱いお子様がいらっしゃるご家庭では、プールの後はシャワーでしっかり洗い流すよう、お子様にもお話し下さい。
勿論、プールに入る前のシャワーもしっかりと。
身体に付着した汚れも塩素の消耗の原因になります。また、人の汗や身体の汚れが水中に溶けて生じたアンモニア性窒素と塩素剤が反応してできた結合塩素(クロラミン)は不快な刺激臭があり、皮膚や目に刺激を与えます。プールに入った時のツンとした臭い、目が充血する原因はこの物質です。
数年前のテレビ番組で「プールの臭いの原因はオシッコ!」という衝撃的?なタイトルを目にしましたが、オシッコだけが原因ではありません。汗にもアンモニア性窒素は含まれています。
お子様には、しっかり汗や汚れを洗い流してプールに入るようお話し下さい。
子ども達が、快適かつ安全なプール授業を楽しめますように。
学校薬剤師は学校環境基準等を基に検査を行い、各学校の事情に応じて指導や助言を行います。ここでのお話も一学校薬剤師が担当校での検査を行った際の限定的な見解が多分にあることをご留意ください。
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