我が家のクスリ箱⑨(最終回) それぞれのレスキュー漢方薬

漢方

コロナ禍でセルフメディケーションの意識が高まったと言われています。
緊急性の低い症状は市販薬を使って経過を見る、必要に応じて受診する・・・そうした工夫を身につける事が大切だと思います。
応急処置に使う救急箱に常備するお薬は家族誰もが使えるもの、汎用性の高いものが理想です。そうした意味でも漢方薬はおすすめです。

以前に救急箱に入れておくとよい漢方薬をご紹介しました。(「救急箱にも漢方薬を 常備しておきたい漢方薬は?」
我が家の救急箱にも漢方薬がいくつか入っています。最終回のお話は、夫・息子・私のお役立ち漢方薬のお話です。

桂枝湯は夫のお守り

桂枝湯けいしとうは、桂枝・芍薬しゃくやく大棗たいそう生姜しょうきょう甘草かんぞうから成る方剤です。葛根湯かっこんとうから麻黄まおうと葛根を除いています。発汗作用が穏やかで、葛根湯よりも優しい方剤となります。
体力が低下している等、(≒エネルギー)が不足気味の時に、風や寒さにあたって引き起こされた症状(風邪の初期、頭痛、悪寒、微熱)に使われます。
ただし、作用の優しい処方ですので「効かない」と感じる人も多いかと思います。
風邪の初期で、胃腸が弱くない、汗をかいていない、発熱や悪寒の症状が強い…場合は葛根湯の方が効果的かもしれません。
逆に、いつも「何だか風邪っぽい」と口にする人には適した方剤といえます。

我が家で、桂枝湯を使っているのは夫だけです。
痩せ型で汗かき、胃腸が弱く、ある意味典型的な気虚体質(元気不足)な夫は、よく風邪をひき、そのまま胃腸のトラブルにまで発展していました。
そこで、「少し寒気がする」「風邪ひいたかも」という時に桂枝湯をすすめました。1~2回の服用で元気になることが多いようです。本人自身が気に入ったらしく、桂枝湯を鞄に数包しのばせて「あれ?」と思った時に飲んでいると聞いています。
ここまでくると、「気のもちよう?(プラセボ効果)」とも思えますが、プラセボ万歳です。
実際、ここ数年間で彼が風邪で寝込むことはなくなりました。

「病は気から」というのは「気持ち次第で良くも悪くもなる」と言う意味で使われることが多いのですが、漢方の観点からは真の意味で「気(≒エネルギー)」のせいなのです。
桂枝湯は温めて「気」の巡りを良くすることにより、低下した体表の生理機能を回復させる良い薬です。

小建中湯のお世話になった息子

小建中湯しょうけんんちゅうとうは、桂枝・芍薬・大棗・生姜・甘草からなる桂枝加芍薬湯けいしかしゃくやくとう膠飴こういを加えた方剤です。
ここで「あれ?桂枝湯に…じゃないの?」と思われた方は、暗記力・注意力に優れた方です。
先程の桂枝湯で「桂枝・芍薬・大棗・生姜・甘草から成る方剤です」とありました。同じ構成で、含まれる芍薬の分量が桂枝湯の2倍量になっているのが桂枝加芍薬湯です。
芍薬の量が増えることにより、体表面(「漢方では「ひょう」といいます)への作用(桂枝湯がそうですね)から体の内部(漢方では「」といいます)へ働くようになり、腹痛や下痢・便秘等の消化器のトラブルに用いられるようになります。
小建中湯は、これに膠飴が加わることにより、元気をつけてお腹の働きを正常に戻す作用が増します。
桂枝加芍薬湯よりも小建中湯は子供に用いられることが多いです。膠飴は麦芽の飴なので、小さな子供でも飲みやすいです。但し、吐き気がある場合は膠飴が入っていない桂枝加芍薬湯が適しています。

小建中湯は、幼い頃から息子に良く使っていた薬です。
「ウンチがでない」「ウンチがユルユル」…で、「お腹が痛い」と言う時に飲ませていました。
成長してからは「便秘の時に良い」ので、彼は「下剤」だと思っていたようです。「ちょっと下痢が続いている」と言った時に小建中湯を渡したら「下痢だってば」と不審がられました。
…いえいえ、お腹の働きを正常に戻す薬です。便利な薬です。

桂枝茯苓丸は私の常備薬

桂枝茯苓丸けいしぶくりょうがんは、桂枝・芍薬・茯苓・桃仁とうにん牡丹皮ぼたんぴから成る方剤です。
代表的な瘀血おけつ(血の巡りが滞っている状態)を改善する方剤です。血流の改善や止血、抗炎症を目的としている処方で、様々なケースで用いられます。

私が使ったきっかけは、月経時の下腹部痛です。桂枝茯苓丸を飲むことで、いわゆる鎮痛剤の使用頻度が減りました。
その後、子宮筋腫が見つかったので、満量(1日量)ではないですが基本的には飲み続けています。「この大きさなら、このままにしていても大丈夫」という状態をキープしている感じです。

また打撲にも使います。派手に転んであちこちを打ちつけた時、満量をきっちり飲むと翌日の痛みや内出血が少なくなるからです。
間抜けな私には、欠かせない薬です。

何かあると家族で需要が増す紫華栄

紫華栄しかろんは、先程からお話している漢方薬に比べて少しマニアックかもです。方剤名でなく、商品名です。
気血きけつを補う当帰とうき人参にんじん黄耆おうぎに、炎症を抑える紫根しこんを含む漢方薬です。
心身の疲労・冷え症・血色不良・虚弱体質・発育期・胃腸虚弱・食欲不振等で、滋養強壮効果を発揮します。

この薬との付き合いは長く、虚弱体質児だった私が最初に飲んだ漢方薬でした。以来、常備しています。
夫はハードワークが続いた時、「これを飲んで寝ると次の日に疲れが残らない!」と言います。
私も疲れが溜まって、たっぷりの睡眠だけでは心もとない時には飲みます。
風邪や他の体調不良で、早い回復を期待して服用することもあります。
少々お高いのですが、1本1000円近い栄養ドリンクよりは安いし、良く効くと思います。

滋養強壮・免疫力をつける効果があるので、体調を崩したくないイベント(受験や大事な仕事等々)を控えている時にも、前もって使います。
新型コロナで「第○波」と言われると、救急箱から紫華栄の減りが早くなっていました。体力に不安を感じる時に家族がそれぞれ使ったからです。

メジャーな漢方薬で、紫華栄に近いのが補中益気湯ほちゅうえっきとうかなと試してみたこともあります。
結果は、夫も息子も「何か違う…」と。
うーん、やっぱり紫根が大きな差なのでしょうか。紫根は外用薬の紫雲膏しうんこうの材料ですが、内服で使われることは少なく、エキス剤として存在するのは、私の知る限りでは紫根牡蛎湯しこんぼれいとうと紫華栄だけなので。
もしくは、気のもちよう?このゴールドな包装が良く効く気がする?
…どちらにせよ、家族の誰も寝込むことがないのは、ありがたい話です。

最後に

家族それぞれの困った時に使う漢方薬をご紹介しました。
今までご紹介したような応急処置に使いやすい漢方薬がある一方、症状や体質に応じた漢方薬選びは時に難しいこともあります。
まずは、漢方薬に詳しい医師や薬剤師、登録販売者にご相談を。

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救急箱シリーズは今回で最後です。
我が家の救急箱の中身にお付き合いいただき、ありがとうございました。
皆様の救急箱の薬選びの参考になれば嬉しいです。

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