若い時分、ドクターとお話するのは問い合わせの電話対応やMR同行(製薬会社時代)であったり、疑義照会(薬局で←「薬剤師って…」参照)の時でした。
年を重ねるようになって、自分や家族が受診する際にドクターと話す比率が増えてきました。
当然、仕事での会話と患者やその家族としての会話は、話す内容も違えば感じ方も違います。
今回もそんな話を一つ…。「患者な薬剤師①〜緑内障編〜」の後日談です。
目薬1本で、どれぐらい使えるか?
さて、右眼の緑内障がわかり点眼での治療がスタートした訳ですが、私の場合片眼のみの点眼ですので、目薬1本で2ヶ月過ごせる計算になります。
通常、5mlの目薬1本の場合、1日2回両眼点眼で1ヶ月分となります。 緑内障の目薬のうち、1日1回点眼の目薬は1本2.5mlで両眼1か月分です。 ボトルの大きさは5mlのものと変わらないので、少ししか入っていないように見えますが間違いではありません。
「緑内障の目薬は高いし、片眼だと1ヶ月以上あるから、なくなるまで使い続けていいよ」とドクター。
確かに緑内障の目薬は高額のものが多いです。治療を始めた当初、私が使っていた目薬は、薬価にして1mlあたり1000円近いものでした。
最後の一滴まで使わないと勿体なさ過ぎ!
目薬開封後の使用期限は?
ですが、ここで疑問が。
通常、開封後の目薬の使用は、処方箋でお渡しするものは1か月まで、ドラッグストア等で市販されているものは2〜3か月までとされています。(使い捨ての目薬を除く。)
当然、私が使っている目薬も…。
恐らく、1か月で薬効成分の含有量が低下する可能性というより、開封後の汚染による雑菌の増殖が問題だと考えられます。
であるならば、きちんとした使用及び保管状況なら1か月たったからと捨てる事はないのではと思いますし、実際1か月後も使っていた目薬だってあった訳で。(勿論、おすすめはしません。絶対に!)
でも、ドクターが言うように使い続けて本当にいいのかな…。何より、こんな話を患者さんから聞いたら、どう対応していこうかな…。だって、いつも「開封後の使用は1か月までが目安ですよ」と言い続けてたし…。
そこで、この目薬のメーカーさんに尋ねてみました。
「片眼だけ緑内障の患者さん(私の事だけど)から、こんな話聞いたのですけど…」という体で。(すみません、自作自演っぽくて。)
やはり薬効成分の含有量低下というより、点眼液中の細菌類の増殖が問題との事でした。
「1か月以内」の根拠は医療用点眼薬に課される「保存効力試験」にあります。
簡単に言ってしまうと、一般的な細菌類を点眼液に入れて1か月後の菌の数が基準値内かどうかを調べる試験です。
医療用の点眼薬はこの試験をクリアされているので、普通の使い方をしている限り1か月は問題なく使えるといえます。
言い換えるならば、「開封後1か月は大丈夫ですよ。その後はわからない。データがないから。」という事になります。データがないから絶対ダメとも言えない、でも保証できない…という感じでしょうか。
さて、メーカーさんのお答えは、
「ドクターのご指示通り(1か月過ぎても使いきる)で結構です。ただし患者様(私だけど)には汚染を避ける為、先端が睫毛等に触れないよう、高温下に置かないよう注意を促して下さい。」
でした。
…はい、注意して使い切ります。
その後…
時は流れ、私が使っている目薬の薬価が下がっていき、ジェネリックも登場しました。
ジェネリックに関しては色々な考えがあるかと思いますが、私に関してはジェネリックに変更後も眼圧が安定していて、お財布に優しい結果となりました。
そして、当初は右眼だけだったのが左眼の眼圧も徐々に上がっていき、両眼の点眼となってしまいました。「基本は両側性の疾患だからね…」と聞かされていたので覚悟はしていましたが、使う目薬の量は2倍に。(当たり前だけど。)ジェネリックが使えて良かったかも。
両眼だと、きっちり1本1か月分だし。
最後に…薬剤師の視点から
やはり、患者さんには「目薬の開封後の使用は1か月」をお願いしたいです。
どのような使われ方をされているか、保管状態はどうか、それらが把握できない以上、根拠のある期間をお伝えしないといけないと考えています。
中には、点眼薬本体に記載されている使用期限までは使えると思っておられる方もいらっしゃいます。
春先に「去年の花粉症の時に余った目薬を使っていた」と仰る患者さんもいたりします。
記載されている使用期限は、開封前のものである事をお忘れなく。
そして、先端が睫毛に触れないように点眼して下さい。睫毛についた汚れや雑菌が汚染の原因になってしまいます。
また、適正な温度での保管を。薬剤師が「室温で」と言う時の温度は、1〜30度です。(医薬品の品質規格書である「日本薬局方」に定義されています。)夏場、車の中に入れっぱなし…なんていう事がありませんように。
緑内障やドライアイのように継続して使う目薬は、本来、点眼回数を守れば1か月以内に使いきるものが殆どです。1か月たっても残っている場合は、さし忘れが度々あるのかもしれません。また、お年寄りに多いのですが、「早くになくなってしまう」と言われる場合は、上手に眼の中に薬をさせないで何度も滴下している可能性が高く、点眼補助具の使用や介助者が必要かもしれません。
正しい使い方で、眼のトラブルを防いでいきたいですね。
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