漢方薬は、本当に「長く飲まなければならない」のか?

漢方

「漢方薬は、長く飲まなきゃダメなのでしよ?」
…よく言われます。(特に年配の方に。)
本当にそうなのでしょうか。

確かに慢性化した症状や体質改善を目的とした場合、1〜2か月単位で続けてもらい、ご体調を伺いながら服用量の加減や漢方薬の変更を行います。
アトピー性皮膚炎や耳鳴りを始め、「長年悩まされていた」と表現される症状がそれにあたります。
ただ、「証」(その人の症状や体質)がピタリと合えば、先程の慢性化した症状が比較的早く改善する場合もあります。

また、体調を維持する為に服用を続ける場合もあります。補中益気湯ほちゅうえっきとう十全大補湯じゅうぜんたいほとう人参養栄湯にんじんようえいとうなど「補剤ほざい」(気血きけつ≒エネルギーや血液・栄養成分を補う薬)と呼ばれる漢方薬が使われることが多いです。

一方で、急性期の症状に素早く効果を発現する漢方薬もあります。
例えば、こむら返りに使われる芍薬甘草湯しゃくやくかんぞうとうは数分後に効果がでるといわれています。
ごく初期の風邪では、葛根湯かっこんとうを一度飲んだだけで治まることもあります。
子供の夜泣きやヒステリーに甘麦大棗湯かんばくたいそうとう、パニック障害に四逆散しぎゃくさんを頓服で用いる場合もあります。
ただし、あくまで「証」が合った場合です。病名だけで漢方薬を決められないケースもあるので、ご注意ください。

こうした場合は、基本的には長期服用することはありません。むしろ、長期服用が好ましくない場合も多いです。
例えば、こむら返りの予防に芍薬甘草湯を連用されている場合、甘草の副作用(浮腫み・血圧上昇等)のリスクがあります。
麻黄湯や葛根湯は解熱・発汗後は服用を止めるべきです。初めから汗をかいている人にも不向きです。胃腸障害・不眠・動悸が起きる可能性があるからです。
同様に麻黄が含まれている小青竜湯を花粉症の時期に1日3回飲み続けている方も注意が必要です。
(漢方薬の副作用については、「漢方薬に副作用はないのか?」をお読みください。)

ちなみに、甘草は芍薬甘草湯以外にも多くの漢方薬に含まれています。麻黄湯・葛根湯・小青竜湯は勿論のこと、長期服用の漢方薬として挙げた補中益気湯・十全大補湯・人参養栄湯にも含まれています。
芍薬甘草湯に比べると含有量が少ないのですが、長く飲む場合は定期的に血液検査を行う等の副作用の確認も必要です。

漢方薬を処方してもらった時には
●どのぐらい続けるのか(長い目でみる必要がある薬か、数日で効果がでる薬か)
●服用を止めるタイミング(どのような状態になったら中止してよいか)
を確認すると良いでしょう。

適正な漢方薬の使用で、健やかな毎日を…。

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