曇天は検査日和? 〜照度検査に行ってきました〜

学校薬剤師

雨がぱらつく曇天の日、そんな日に学校に出向けば「こんな天気の悪い日に来ていただいて…」と、先生方は言ってくださいます。

ですが、そんな日にこそ行いたい検査があります。
それが、照度検査です。
お天気が悪い(日が差さない、暗い)状況でも学習に影響がでない明るさが保てているかを確認できるからです。勿論、明るい晴天の日との違いや日照時間の長い時期と短い時期、季節等、様々な影響を考慮すべきなので、学校の特性に応じて一年に2回、検査の時期を決めています。
照度検査については以前にも簡単にご紹介しました(「学校薬剤師と照度検査」)が、今回は照度の測定方法から検査値の評価まで、お話いたします。

※学校薬剤師は学校環境基準等を基に検査を行い、各学校の事情に応じて指導や助言を行います。
ここでのお話も一学校薬剤師が担当校での検査を行った際の限定的な見解が多分にあることをご留意ください。

照度の測定方法

照度とは光に当てられた面の明るさの度合いです。照度計で測定します。

照度計

室内(主に机上面)、黒板面、テレビ面を測ります。場所は一般教室の他にコンピュータ室、図書室が選ばれる事が多いです。


机上面、黒板面は各々9カ所を測定し、その中の最小照度と最大照度の比も求めます。
授業中は黒板を見たり、机の上の教科書やノートを見たりすることを繰り返しています。室内や黒板の明暗の差が大きいと、その度に目を慣らす必要があるので疲労につながってしまいます。そのような環境でないことを確認するための最大照度・最小照度比です。


また、測定時にカーテン等での遮蔽をしているかどうかも記録しておきます。直射日光が強い場合は、遮蔽のある時とない時、どちらも測定することがあります。

測定の際に注意しなくてはならないのが服装です。
白っぽい服装は光を反射する為、照度の測定値に影響(実際よりも高くなる可能性があります)を及ぼします。「薬剤師=白衣」のイメージがあるかもしれませんが、白衣での測定はNGです。黒っぽい服装で測定を行います。
また、自分の身体が陰になり測定値に影響を及ぼさないように、腕を伸ばして身体と測定器を話して測定します。

照度測定の際には、「まぶしさ」の検査もします。
照度が十分にあって明るくても、視野の中に「まぶしさ」を感じさせる強い輝きがあると見え方を妨害するからです。
具体的には、「子供達から見て、黒板の外側15度以内の範囲に輝きの強い光源がない」「見え方を妨害するような光沢が黒板面や机上面にない」「見え方を妨害するような電灯や明るい窓がテレビやコンピューター等の画面に映っていない」ことを確認します。

検査値をどう使うか

照度の学校環境衛生基準は次の通りです。

教室及びそれに準ずる場所の照度の下限は300ルクスとする。また、教室及び黒板の照度は500ルクス以上であることが望ましい。
教室及び黒板のそれぞれの最大照度と最小照度の比は、20:1を超えないこと。また、10:1を超えないことが望ましい。

では、この基準を満たさなかった場合はどうすれば良いでしょうか。

「暗いのだから、照明を増やせばよいのでしょう?」
…勿論なのですが、学校の予算には限りがあります。歴史のある学校ほど、限られた予算の中で優先順位をつけて老朽化した設備のメンテナンスを行っています。
お金をかけない、すぐにできる対処は2つ、①蛍光灯(の場合)の取替を早目にする ②照明器具の清掃をする…です
特に、照明器具の清掃によって照度が10~100ルクスあがるといわれています

また、窓に掲示物を貼らない、ロッカー等でふさがないといった意識をもつことも大切です。
窓の外に樹木等がある場合、それらが日差しを妨げないようにする為の剪定も必要です。
以前担当した学校で、天気によって照度が基準を満たさない教室がありました。校舎の立地の影響もあったのですが、隣接する施設の樹木が生い茂っているのが気になりました。先生方も気にされていたようで、「学校薬剤師からの指摘があった」と測定記録を添えて施設と交渉した結果、樹木の剪定がされるようになりました。データを示すことができたのが良かったのだと思います。
・・・これは一つの事例に過ぎませんが、限られた予算の中で行うべき優先順位を決める為にも種々の検査は必要になってきます。

照度検査に限らずですが、学校薬剤師が行う「検査」は「査察」ではありません。基準を満たさない「不適」を指摘するのが目的ではありません。
検査を行うことによって、問題点を見つけ、それを解決するための方法を学校関係者と共に考えていくのが学校薬剤師の仕事だと私は思います。

最後に、ご家庭でも気をつけてもらいたいこと

学校における照度検査についてお話しました。
学校では基準が設けられていますが、家の中でも勉強や読書をする時は、これに準じた明るさが欲しいところです。
明るさが不十分な場所での作業は眼精疲労の原因となります
また、暗いところで物を見ることが直接視力の低下につながらないとはいえ、暗くて見えにくいと近くで物を見ようとします。近くで物を見る(スマホやゲームもそうですね)行為は近視を助長するといわれています。
家のリビングの明かりは勉強や読書には不十分な照度であることが多いです。
リビングで宿題をする時は、手元灯も使って下さいね。

改めて、学校でもお家でも、子供達が安心・安全な環境で過ごせる事を願っています。

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