富山は奈良と同じく(「薬の博物館で“奈良と薬”に触れてみた!」)、薬の街です。
「富山の薬売り」というフレーズ、耳にしたことのある方も多いかと。奈良より歴史が浅い(と言っていいのかな。でも、奈良は日本書紀の頃からだし。)ものの、江戸時代から300年以上の歴史を誇っています。
まず訪れたのは、こちら。
池田屋安兵衛商店。
創業昭和11年、初代池田実が現在の地に和漢薬種問屋として暖簾を掲げました。戦後まもなく江戸時代に一世を風靡した「反魂丹」の製造販売を始めました。現在も日本の伝統薬を中心に、和漢薬の世界を追及しています。染め抜かれた角三の屋号は、「信用」「伝統」「研鑽」の三つを極めよ―という家訓を表すものです。
こちらでは、古い木製の「製丸機」での丸薬製造実演の見学と体験ができます。
小さな穴の開いている容器に原薬を入れ、ひねり出します。
同じ長さでカットして並べ、板でゴロゴロ回して丸薬にします。
このゴロゴロ、簡単に見えて結構難しいのです。私や夫がすると、こんなに上手くいかず…。
撃沈です。
「富山の薬売り」を全国に広めるきっかけになったのが、看板にも大きく書かれている「反魂丹」です。
300年以上の歴史を持つ、越中富山の薬売り。今でこそ『くすりの富山』として有名ですが、富山が薬で有名になったのは、ある事件がきっかけでした。それが『江戸城腹痛事件』。富山藩2代目藩主前田正甫が江戸城に参勤した折、腹痛になった大名に「反魂丹(はんごんたん)」を服用させたところ驚異的に回復したとされ、この事件がきっかけとなり「越中富山のくすり」の名が日本全国に広まりました。
ふむふむ…。お店の方もお話してくださったな。
2階は薬膳料理が楽しめるレストランになっていたのですが、我々が訪れた時は既に売り切れでした。残念…。
続いて訪れたのは、こちら。
薬種商の館 金岡邸。
富山売薬業に関する資料を中心とした薬業資料の館です。
館の主だった金岡家も江戸末期より薬種商を営み、その資本を元に、富山県の経済界に業績を残しています。
母屋部分は、薬種商店舗を復元しています。百味箪笥(後ろの生薬を入れている棚)は当時のもの。
素敵な箪笥だけど、人形さんがちょっと怖い…。
奥に進むと、生薬見本や当時の薬の製造に使われていた器具がずらり。
貴重な麝香鹿の剥製の他、地竜(ミミズ)・蜈蚣(ムカデ)・蛤蚧(ヤモリ)・海狗腎(アザラシ)等々、普段あまり目にしない動物性生薬も沢山あって、スマホ片手にテンション高めな私でしたが、隣で「こんなの使うの。最初に使った人って…。」と夫はドン引き気味だったので、写真はなしです。
そう、野兎の糞(望月砂というらしい。名前だけ見ると、素敵な感じがするのに。)まで使うのは、ここで初めて知りました。蝙蝠の糞(夜明砂)だけではなかったのですね。他にも色々ありそうな気がします。
売薬業の歴史のコーナーには、当時の医薬品のパッケージ、行商に使っていた鞄等が展示されています。
面白かったのは、おまけ(土産・販促品)の数々。
奈良の配置薬の博物館にもありました。(「薬の博物館で“奈良と薬”に触れてみた!」)
この金岡邸と後から行った富山市売薬資料館で冊子と一緒に渡された紙風船も、当時のおまけの名残りだったのですね。最初は「何?」と思ってしまいましたが。
そして、富山市売薬資料館。富山市民俗民芸村内にあります。
別館は江戸時代中期の売薬商家の土蔵を移築したものなのですが、令和6年能登半島地震による被害で休館となっていました。
本館には様々な資料が展示されていたものの、撮影禁止…。
売薬さんの行商バッグが非常に重かった(中身は空なのに!)のが印象的でした。
おそらく展示資料数は、最後に行った富山市売薬資料館が一番なのでしょうが、「さっきもあったね」的(?)な物も多くて、意外とサラリと見て終わってしまいました。(ごめんなさい。)
なので、寄り道のおまけ。
民俗民芸村内で、近くにあった民俗資料館。江戸時代後期の農家住宅が博物館になっています。
何気にガラリと引き戸を開けて目に飛び込んだのが…。
いきなり厩。まさかの馬人形に声をあげてしまった。不覚…。
農耕用具や台所用具、様々な生活用具が所狭しと展示されていて、楽しめました。
その中で目に留まったのが、これ。
干し柿を作る際の皮むき機でしょうか。どうやって使うのか、説明を読んだだけでは全くわからない私。
そして、これ。常滑市でも見た(「土管と急須と猫ちゃんの街〜焼き物の街、常滑市を訪れました〜」)昔の陶器の便器!
独断のセレクトです…。
最後に、池田屋安兵衛商店での大人買い?の数々。
前回のお話(「薬膳茶は、やっぱり美味しくなくては! ~薬膳茶ワークに参加しました~」)でも紹介した薬膳茶の材料はこちらで入手しました。
逸話にあった反魂丹も。
この反魂丹、この日の宿で大活躍でした。
そのお話は、また今度…。
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