以前にもお話をした、学校での空気検査は夏季と冬季の年に2回行います。(「学校の空気〜学校薬剤師は空気検査も行います」)
夏季は室温と湿度に加えて、ホルムアルデヒド等の揮発性物質に注意が必要でした。
今回は、冬季の空気検査で注目したい項目についてお話していきます。
冬場の室内環境で注意したいのは、「湿度」です。
乾燥した環境では、一般的にウイルスを含んだ飛沫は小さい微粒子になりやすく拡散しやすいといわれています。例えば、インフルエンザウイルスは絶対湿度が11g/㎥以下になると流行し始めます。
「絶対湿度」は空気1㎥に含まれる水蒸気の重さです。通常、私達が使っている「湿度〇〇%」は「相対湿度」です。これは、ある温度の空気中に含みうる最大限の水分量(飽和水蒸気量)に比べて、どの程度の水分が含まれているか示す値です。式で表すと、こうなります。
相対湿度(%)=空気中の水蒸気量/飽和水蒸気量×100
空気中に含みうる水蒸気量(飽和水蒸気量)は、気温に比例します。冷たい空気は水分を多く含む事ができません。
上の式の分母が変わってしまうので、同じ「湿度50%」でも気温10度の時と気温25度の時では、空気中の実際の水蒸気量は随分と違ってくるのです。例えば、「気温10度・湿度50%」の時と「気温25度・湿度20%」の時の水蒸気量は同じです。
換気は非常に大切ですが、それにより室温を下げてしまうと快適な環境を損ねるだけでなく湿度の低下につながります。
学校では換気が重要視されていることもあり、冬の室温は低めです。加えて、子ども達は意外と低い室温でも平気なことが多いようで、「寒くない?」と声をかけても「全然」と返事が返ってきたりします。子ども達が動き回っている幼稚園では特にそうです。
ですが、湿度の維持の為には室温をある程度の温度に保つことが重要です。エアコンの設定温度を上げる、換気の際は比較的暖かい廊下側の空気を取り入れる等の工夫が必要です。
また、エアコン暖房自体が乾燥を招きやすいので、暖房器具の使い方も重要になってきます。自宅では、加湿器を使用したり、室内で洗濯物を干す等の工夫をされているご家庭も多いかと思います。
管理や費用の問題から加湿器の使用が難しい場合、学校では手軽な湿度対策として濡れたタオルをかけておくことを提案しています。1教室にバスタオル2枚程度が良いといわれています。
インフルエンザの流行を防ぐ為には絶対湿度が11g/㎥の維持が理想ですが、結露や換気を考えると難しい条件となります。現実的には「室温21度、相対湿度40%を目安に」と、学校の先生方にお伝えすることが多いです。
ちなみに、学校環境衛生基準では「温度は17度以上、28℃度であることが望ましい」「相対湿度は30%以上、80%以下であることが望ましい」とされています。
学校でも自宅でも、子供も大人も、安心・安全な場所で冬の健康を守っていきたいですね。
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