若い時分、ドクターとお話するのは問い合わせの電話対応やMR同行(製薬会社時代)であったり、疑義照会(薬局で←「薬剤師って…」参照)の時でした。
年を重ねるようになって、自分や家族が受診する際にドクターと話す比率が増えてきました。
当然、仕事での会話と患者やその家族としての会話は、話す内容も違えば感じ方も違います。
今日はそんな話を一つ・・・。
えっ、私が緑内障?
左眼の眼圧が高い事を人間ドックで指摘されたのは、40歳半ばの事でした。
眼圧とは「目の中の圧力」、つまり「目の硬さ」のことを言います。
目を球形に保ち、目の中の血液の流れをスムーズにするために、一定以上の眼圧が必要ですが、眼圧が高すぎると視神経が傷むなどの障害が出てきます。
「ちょっと高いけれど、コンタクトレンズの人は高めだから・・・」と技師さん。
その時は、そんなものか・・・と思っていましたが、後日郵送された検診結果に「要精密検査」と書かれているのが気になり、眼科へ行くことにしました。
「コンタクトレンズの人は眼圧が高め」というのは、微妙に間違いです。 緑内障の危険因子の一つは「眼圧が高い」事です。もう一つの危険因子は「強い近視」です。 コンタクトレンズ使用者の多くも(私も含めて)「強い近視」です。 よって、「眼圧が高い」人にコンタクトレンズ使用者が多くみられるわけです。 決して「そんなものか」と放っておいてよいものではありません。 緑内障の疑いがあります。是非、眼科へ行きましょう。
やっぱり私も緑内障
結果的に、左眼だけ緑内障と診断されました。
眼底検査(視神経の状態を調べる検査)で異常はなかったものの、左眼だけ近視が強いせいか網膜が薄く、網膜が薄い部分に視野の異常がみられたからです。
視野検査で異常がみられたものの自覚症状は全くなく、眼科に行って良かったです。
緑内障は、視覚障害の原因疾患の第一位です。勿論、きちんと治療を継続していれば完全失明にいたるケースは稀です。ですが、緑内障の治療は眼圧をコントロールして進行を抑えるだけで、完治する方法は見出されていません。
心穏やかでないのは、とにかく寿命まで見える事を維持したいからで
眼科医「発症した歳を考えると、何とも言えないよね・・・」
・・・そりゃそうです。神のみぞ知る。でも、尋ねたいのが患者の本音。わかっているけれど、答えにくい質問しちゃう私。先生、ごめんなさい。
目薬一つとっても心穏やかではありません
眼科医「緑内障の目薬は高いです・・・。」
・・・知っています。処方いただいたのは、プロスタグランジン製剤と呼ばれる眼圧を下げる目薬の一つですが、安くないです。
我が家のお財布の為にも、プロスタグランジン製剤の点眼薬はいくつかあるので、せめてジェネリックがでている製剤で先ずは効果を試してもらいたかった・・・。確か、どの製剤でも眼圧効果作用に大きな差はなかったはず・・・なんて患者がお医者様に言えません。
受診の度に心穏やかでない質問も
眼科医「自覚症状ないですか?見えにくさあります?」
私「元々、目が悪いのでボンヤリしか見えないです。自覚症状なんてわからないかも。」
眼科医「視力とは別だから。わかりますよ。」
・・・本当にわかるのかな。そもそも、緑内障の大きな特徴は「自覚症状がない」でしょうに。どんな症状に気づけばいいのでしょう。
きっと、お医者様の常套句かな。私も薬局で言っています。「お変わりありませんか?」って。
心穏やかでないので、とにかく答え合わせがしたい
私「眼圧をあげる薬とかあるみたいですけれど、飲まない方がいい薬ってあります?」
眼科医「貴女の緑内障のタイプなら、気にしなくていいですよ。」
以前は、緑内障全般を禁忌とする薬剤がそれなりに存在していました。実際のところ一部の緑内障に対して緑内障を悪化させたり急激に眼圧を上昇させる恐れがあるものの、使用に差し支えないタイプの緑内障も多いです。わかっているけれど、「大丈夫」と言ってもらいたい私がいます。
ちなみに、2019年の医薬品添付文書改訂で、それらの医薬品も禁忌の対象が緑内障全般から一部の緑内障となりました。
最後に・・・薬剤師からみた緑内障
緑内障は自覚症状に乏しい疾患です。そして、失われてしまった視野を取り戻すことは今の医学では不可能です。よって、早期発見がとても大切です。
40歳を過ぎたら、1年に1度は眼圧を測定する事をお勧めします。ご両親やご兄弟が緑内障の方、近視の強い方は緑内障リスクが高いといわれています。正常眼圧であっても視神経の異常がみられる「正常眼圧緑内障」も日本人には多いです。眼圧測定と共に眼底検査も大事です。
緑内障の治療(多くは点眼剤)が始まっても、自覚症状がない分、治療の大切さを認識されていない患者さんも少なくないです。お薬代が決して安くない事もあって、数年後に治療を中断してしまう方もいらっしゃいます。緑内障治療の目的は進行の抑制です。繰り返しになりますが、病状が進行して障害された視神経を治すことも、視野を取り戻すこともできません。「継続は力なり」です。
点眼薬によっては、喘息の方等使用が好ましくない疾患があります。「眼科だから関係ないだろう」ではなく、是非ご自分の基礎疾患を眼科の先生にお伝え下さい。
点眼薬は1滴の滴下で十分ですが、うまく滴下できずに必要以上に滴下してしまう方がいらっしゃいます。(お年寄りに多いのですが。)必要以上の滴下は眼周囲の副作用のリスクだけでなく、全身の副作用にもつながります。
眼圧の状態によって、2種類以上の目薬をさす事があります。その場合は5分以上の間隔をあけて点眼して下さい。そうしないと、先にさした目薬の効果が期待できなくなります。
間隔をあげて次の目薬をさす・・・のは点眼し忘れにつながり、日常生活において結構難しいと感じる方も多いです。最近は2種類の薬剤が1つになった配合剤と呼ばれる目薬も登場しています。眼科の先生にお尋ねしてもいいかもしれません。(患者な薬剤師② 〜緑内障編その2「目薬っていつまで使っていいの?」)
そして・・・。私の「緑内障患者道」もまだまだ(生涯ですね)続きます。
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