漢方薬≠生薬

漢方

薬局でお薬をお渡しする際に、しばしば遭遇するやり取りがこれ。
「他でお飲みのお薬はございませんか?」
・・「漢方薬を飲んでいます。今日のお薬と一緒に飲んで大丈夫ですか?」
「どのような漢方薬ですか?」
・・・「センナのお茶を飲んでいます」

センナはマメ科植物の葉を用いた生薬です。

生薬とは、薬効のある天然物(植物・動物・鉱物)を加工したものの総称です。

センナは古くから便秘薬として用いられていました。薬理成分のセンノシドが大腸を刺激して便通効果をあらわします。センノシドは医療用医薬品にも市販薬にも使われています。

センナ→センノシドの限らず、多くの医薬品は生薬の薬理成分を抽出・合成してつくられていると言っても過言ではありません。

…横道に逸れてしまいましたが、センナは「漢方薬」ではありません。同様に、ドクダミ(十薬)やゲンノショウコも「漢方薬」ではありません。

では、「漢方薬」とは何でしょう…?

漢方薬とは

漢方薬とは、漢方医学に基づき複数の生薬を組み合わせてつくられる薬です。

その組み合わせ(方剤)は、古代中国からのものや日本に入ってから進化を遂げたものがあります。

例えば、こちらは風邪(だけに使われる訳ではないのですが)でお馴染みの「葛根湯かっこんとう」のエキス剤、顆粒タイプです。

ツムラ葛根湯エキス顆粒

傷寒論しょうかんろん」という古代中国の医学書に記されている方剤です。葛根かっこん麻黄まおう桂枝けいし芍薬しゃくやく甘草かんぞう生姜しょうきょう大棗たいそうという7種類の生薬が組み合わさってできています。

こちらは充血や結膜炎等の眼のトラブルに用いられる「明朗飲めいろういん」の煎じ薬です。

明朗飲 煎じ薬

「傷寒論」に記されている「苓桂朮甘湯りょうけいじゅつかんとう」(構成生薬は茯苓ぶくりょう白朮びゃくじゅつ・桂枝・甘草)に黄連おうれん細辛さいしん車前子しゃぜんしを加えた加えてできた処方です。原典は「浅田家方」、日本独自の発展からつくられた処方です。

このように漢方薬は、基本的には2種類以上の組み合わせでできています。

 ※例外として、喉の痛みに使われる事の多い「甘草湯」(甘草だけ)があります。

漢方薬と混同しやすい薬①:民間薬

数種類の生薬が使われる漢方薬に対して、単一の生薬を用いて昔から伝承されている薬は「民間薬」と呼ばれます。

ドクダミ(十薬)やゲンノショウコ、ハトムギ、アロエ・・・等、様々なものがあります。

これは板藍根ばんらんこん

板藍根 生薬

アブラナ科の植物の根です。清熱作用があり、風邪やインフルエンザ等の感染症による炎症に用いられてきました。中国では古くから煎じたものを飲んだり、うがいしたりする習慣があります。

民間薬の多くは作用が穏やかで、お茶代わりに用いられています。ですが、全て安全という訳ではありません。

冒頭のセンナは作用の強い生薬で、比較的刺激の強い下剤です。医薬品として日本薬局方に収載されているので、「お茶」ではなく「お薬」です。

また、板藍根ばんらんこんもインフルエンザ等の感染症や炎症に用いられてきた経緯から新型コロナウイルス対策として注目されていますが、清熱作用をもつ「冷やす生薬」なので冷えの強い人が使う際は注意が必要と考えられます。

漢方薬と混同しやすい薬②:生薬製剤

民間薬が単一の生薬でつくられているのに対して、「生薬製剤」は昔から伝承されている生薬を組み合わせて製剤化したり、合成薬が配合してつくられています。

健胃作用のある生薬が組み合わされた胃腸薬や葛根湯エキスに解熱作用のあるアセトアミノフェンが配合された感冒薬がこれにあたります。

まとめ

世間一般に「漢方薬」と括られているお薬について書いてみました。

細かな事はさておき、どれも人の健康の為に使われるものです。それぞれ、良さや注意すべき点があります。

正しい知識で、上手に使っていきたいものです。

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薬剤師A

漢方を志す、子育て卒業間近の薬剤師。
製薬会社から調剤薬局・学校薬剤師を経て今にいたる。
京都府内の微妙に田舎な地で家族3人暮らし。
興味の赴くまま、あちこちに出没します。

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