頭が良くなる薬って?…スマートドラックにご注意を

学校薬剤師

「頭が良くなる薬」…何だかドラえもんのポケットに入っていそうですね。誰もが欲しくなる薬かもしれません。

結論から申し上げると、そんな薬は存在しません。

今回は「頭が良くなる」と宣伝される「スマートドラック」についてのお話です。

スマートドラックとは?

スマートドラックとは、「頭がスッキリする」「集中力が高まる」「記憶力が高まる」…等の効果をうたって流通されている医薬品やサプリメントです。海外から個人輸入して販売されているものもあります。
受験生が親にも内緒で購入した、良かれと思って親が子供にすすめた…等、乱用による健康被害が懸念されています。
お薬教室や薬物乱用防止教室でも、注意喚起をしています。

どんな薬?何がいけないの?

スマートドラックと呼ばれるものには様々なタイプがありますが、いずれも脳に作用します。
多くは、認知症やてんかん、注意欠陥/多動性障害、睡眠障害等に用いられる薬です。
頭痛や吐き気、発疹等の副作用が発現する恐れがあり、生死にかかわる場合もあります。さらに依存性をもつものもあり、大変危険です。
これらの医薬品は日本では医師が処方箋を発行しないと服用できません。そして海外からの輸入品を使う場合は、品質の面からも危険が伴います。現在では、多くの成分で個人輸入に規制がかけられてもいます。

医薬品であろうと、病気の治療、再発や悪化を防ぐといった本来の目的以外に使用する事も「薬物乱用」なのです。

医薬品ではなく、健康食品やサプリメントとして流通しているものもあります。その中には、危険な成分が含まれているものもあります。特に輸入品には注意が必要です。

「でも、頭が良くなるサプリメントって普通に売っているよね?」
…そうですね、記憶力や集中力に良いとされるサプリメントも各種メーカーから販売されています。
主なものとして、DHAやEPA、レシチン、イチョウ葉エキス等が挙げられます。いずれも脳血流を良くする成分であったり、神経伝達物質に由来する成分であったりします。長く使われていて安全性の高いものばかりです。
ですが、医薬品のようにハッキリとした効能・効果をもつものではありません。「個人の感想」という形でアピールされているものも多いです。
決して効果がない訳ではありません。健康の為に使うのも良いでしょう。ですが、その効き目は受験を控えた子供達が期待するようなものではないかと思います。

過度な期待をして、それなりのお金でサプリメントを使う(勿論、それも悪くないです)のなら、栄養バランスの良い食事・適切な睡眠を心がけてもらいたいです。
そして、適度な運動。運動をすることで集中力が高まり、作業効率があがるといわれています。
香りを上手に取り入れるのも良いでしょう。ローズマリーやレモンの精油は脳血流量を上げ、集中力を高める効果があります。緊張を和らげ、勉強の疲れを癒すにはラベンダーの精油もおススメです。

「何だそんなこと…」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
ごく当たり前のことばかりです。
ですが勉強やスポーツと同様、当たり前のことをコツコツやり続けることが遠回りのようで一番の近道なのではないでしょうか。

最後に・・・

受験生のお子さんやそのご家族が期待するような「頭が良くなる薬」は、残念ながら存在しません。
それを強くうたっているものがあれば、心や身体に危険な薬物か誇大広告だと考えてよいでしょう。

ところで、そもそも「頭が良い」とはどういうことなのでしょう。
学校の成績が良いことなのでしょうか。
偏差値の高い学校に入ることでしょうか。
それも一つの判断材料でしょう。
ですが、私は「自分の頭で物事を考えられる人」「想像力のある人」こそが頭の良い人だと思います。
今まさに、夢と不安を抱えながら試験に臨む子供達にとっては「綺麗ごと」にしか聞こえないかもしれません。私もそう思っていました。
でも、きっと何年かたったら、大人になったら、そう気づく時がくるのではないでしょうか。

これをしたら、どうなるか。
これを言ったら、相手はどう思うか。
息子には自分の頭で考え、慮って行動できる大人になって欲しいと願っています。
勿論、勉強もシッカリしてくれたら嬉しいですけれどね。(^^;)

※この記事は「薬剤師ならではの薬物乱用防止教室」を参考にいたしました。

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