我が家のクスリ箱⑧ 芍薬甘草湯の使い方

漢方

コロナ禍でセルフメディケーションの意識が高まったと言われています。
緊急性の低い症状は市販薬を使って経過を見る、必要に応じて受診する・・・そうした工夫を身につける事が大切だと思います。
応急処置に使う救急箱に常備するお薬は家族誰もが使えるもの、汎用性の高いものが理想です。そうした意味でも漢方薬はおすすめです。

以前に救急箱に入れておくとよい漢方薬をご紹介しました。(「救急箱にも漢方薬を 常備しておきたい漢方薬は?」
我が家の救急箱にも漢方薬がいくつか入っています。今回は「芍薬甘草湯しゃくやくかんぞうとう」のお話です。

どんな薬?

芍薬と甘草からなるシンプルな処方です。どちらも急性の痛みや痙攣を治す作用があります。
こむら返りの第一選択薬といってよいでしょう。服用後5〜10分で効果が出てきます。
就寝中(主に明け方)にこむら返りを起こしやすい方は枕元に置いておくとよいです。OTC医薬品(市販の一般医薬品)には水なしで飲めるゼリータイプのものもあります。

但し、甘草は鎮痛・消炎の作用をもち、他の生薬の副作用を和らげる働きがある一方、摂取量が増えると、むくみや血圧上昇等の副作用が起きやすいといわれています。
芍薬甘草湯は他の方剤に比べて甘草の含有量が多い方剤です。エキス剤を1日1包程度服用するぐらいでは心配が要らない事が多いのですが、「何度も足がつる」「こむら返りが怖いから、ずっと飲んでいる」方は要注意です。
甘草は漢方エキス製剤の約7割に含まれている生薬です。煎じ薬ですと各々の生薬の加減がしやすいのですが、エキス製剤は2種類・3種類・・・と組み合わせると重複する生薬の量が多くなってしまいます。芍薬甘草湯と他の漢方薬を併用する場合は、必ず医師や薬剤師、登録販売者にご確認ください。
また、甘草は菓子類にも使われています。ハーブとしても用いられ、その場合は別名である“リコリス”で表記されていることが多いです。
過度に心配する必要はありませんが、甘草の摂り過ぎには注意が必要です。

どういう時に使う?

鎮痛・鎮痙の薬ですので、こむら返り以外の筋肉の痛み、四肢の痛みにも用います。
胃痙攣をはじめとする胃痛や腹痛にも良く効きます。一般的な鎮痛薬でも治まらない生理痛に用いられることもあります。

方剤の性質上、また副作用防止の観点から、特殊な疾患で医療機関から長期処方されるケースを除き、殆どの場合は頓用(症状が出た時に使う)です。頓用で用いられる限りは、過度に副作用の心配をする必要はないでしょう。こむら返りや胃痛・腹痛に用いられる他の薬の副作用を考えると、芍薬甘草湯の方が使いやすいと思います。比較的小さなお子さんにも使用できます。
ですが何度も起きてしまうのならば、原因を探って対策をとるべきです。

こむら返りの原因として体内のミネラルバランスの崩れ、脱水、冷え、筋肉疲労等が挙げられます。
気温が下がっている冬の夜間~明け方に起きやすいのは冷えが原因でしょう。また、夏と違い水分補給をこまめにしない冬場は、気づかぬうちに脱水気味になっていることが多いです。
漢方の観点からは「けつ」(血液も含め、全身を循環して臓腑・組織に栄養と潤いを与えるもの)の不足(血虚けっきょといいます)が引き起こすと考えられています。
睡眠不足や目の使い過ぎは血を消耗してしまいますので、ご注意を。
血を補う食材に、赤身の肉や魚、人参、クコの実、棗、黒ごま、黒豆、ヒジキ等があります。是非お試しください。

胃痛・腹痛が頻回に起きる場合も、大きな病気が隠れていないか医療機関を受診することをおすすめしたいです。

最後に…我が家の場合

我が家では、急な胃痛や腹痛にストックしています。甘草のお蔭で飲みやすい味でもあります。
胃痛や腹痛に良く効く薬は他にもありますが、便秘や口渇、眼圧上昇、尿閉(前立腺肥大の方は要注意です)を引き起こす可能性があります。単回での服用に関しては心配ないと眼科医からは言われているものの緑内障の私としては避けたい類の薬となります。(「患者な薬剤師① ~緑内障編~」)
実は家族で芍薬甘草湯を一番多く使うのは私で、胃痙攣に良く服用していました。私の場合は過労やストレスからくることから多かったのですが、漢方でいうところの「肝」「脾」(「中医学 事始め④ ~西洋医学の解剖図がなじんだ頭に、東洋医学の五臓六腑がしみわたるまで~」)のケアで随分と使用頻度が減ってきました。日頃の養生の大切さが身に染みています。

余談ですが、先日母から電話がありました。
「寒くなって足がつるようになった。足のつりには五苓散だよね?効かないんだけど。」
…いやいや、何故五苓散なの。冷えの足腰のトラブルに芍薬甘草附子湯を医院から処方してもらっているというのに。
そういえば、夏場の足のつりの予防に五苓散を飲んでいたね。(「我が家のクスリ箱① 五苓散の使い方」)きっと、そこから「五苓散=足のつりの薬」と勘違いしちゃったのね…。

お薬は正しく使いましょう。
そうすれば芍薬甘草湯、良い薬です。

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