同じだけど違うもの?違うけれど同じもの?…漢方エキス剤の中身を考える

漢方

価値観の違いがあるとはいえ、それなりの出費にはなる漢方薬。(「漢方薬の値段のお話 ~やっぱり漢方薬は高いのか?~」
お得な方が良いに決まっています。
お得であれば続けやすい…これも大事です。

だから「漢方薬局でもらったのと同じ名前の漢方薬をドラッグストアやネットで買ってみた」、
「自分で買ってた漢方薬を保険の方が安いから、医院で処方箋に書いてもらった」という方もいらっしゃるでしょう。

それで事足りるのであれば良いのですが、今回は”ちょっと問題かも”と思われるケースをお話いたします。

問題①同じ漢方薬でも含有量が違う場合があります

「こっちの方が安い!」とドラッグストア等で買った商品は、1/2〜2/3の含有量しかない場合があります。当然、効き目に差が出ます。”満量処方”と明記されていない商品は、その可能性大です。
だからといって、多めに飲むのはおすすめできません。定められた用法用量以外の使い方でトラブルが起きた時、対応が難しくなります。

逆にドラッグストアで買っていた商品を「保険の方が安いから」と、主治医にお願いすると、処方箋でもらう漢方薬の方が含有量が多い場合があります。
同じ回数を服用すると副作用が出る可能性があります。
特に麻黄まおうという生薬を含む、葛根湯かっこんとう小青竜湯しょうせいりゅうとうは、要注意です。ドラッグストアで買ったもので充分効果があった方が、処方箋でもらったものを服用し、過量が原因で動悸や胃腸障害を起こす場合があります。

問題②同じ漢方薬でも構成生薬が違う場合があります

漢方薬は複数の生薬で構成されています。
この生薬の内容が、同じ名前であっても違うケースがあります。

例えば、柴胡加竜骨牡蛎湯さいこかりゅうこつぼれいとう
瀉下作用のある大黄だいおうが入っているものと入っていないものがあります。
含有量としては多くはないのですが「調子良かったのに、別のメーカー(大黄入り)に変えたら、お腹が痛くなった」ということもあり得ます。

その他、竜胆瀉肝湯りゅうたんしゃかんとう温胆湯うんたんとうも使用目標は同じですが、構成生薬が異なる商品が存在します。

原因は、原典となる古来の医学書によって記載内容が違っていたり、製造メーカーの判断だったりします。
漢方薬は、生薬のパズルで成り立っています。
基本の方剤があって、そこから生薬が加えられたり、抜かれたりして別の方剤になります。
例えば、麻杏甘石湯まきょうかんせきとう桑白皮そうはくひを加えた方剤は五虎湯ごごとうと呼ばれます。五虎湯の方が咳がひどく長期に及ぶ時に用いられやすいといった違いはあるものの、どちらも咳や喘息に使われます。

個人的には一つ二つの生薬の増減で名前が変わるのに、数種類の生薬が違う竜胆瀉肝湯が複数存在しているのが、ちょっと不思議です。
“竜胆瀉肝湯バージョン1”・“竜胆瀉肝湯バージョン2”ぐらいにしてもらえたら、とさえ思います。
どちらも泌尿器や生殖器のトラブルに用いるという点では同じですが、構成生薬から使い分ける先生もいらっしゃるでしょうし、利きめも変わってくると思います。
「同じ名前なら、大丈夫でしょう」とならない典型例です。

問題③違うと思っていたのに、同じ場合もあります

通販番組やテレビのコマーシャルを見て「これ、のんでみようと思うのだけど?」と、調剤薬局で相談されることがあります。

医師が処方する薬よりも自由に手に入れることができる薬の方が効くと思ってしまうのは、宣伝の強さ…でしょうか。

例えば、排尿トラブルに効果があると宣伝されているハルンケア®は八味地黄丸はちみじおうがん、ユリナール®は清心蓮子飲せいしんれんしいんです。
「薬のんでもスッキリしないし、ハルンケア®を試そうと思うのだけど?」と相談された方のお薬手帳に“八味地黄丸”と書かれていたりします。

違う名前でも同じ薬と知らず、お薬が重なってしまう恐れがあります。
勿論、この場合も含有量や構成生薬が異なる場合があります。
やはり、自己判断されず、漢方薬に詳しい医師や薬剤師、登録販売者に相談していただきたいと思います。

他にも…

同じ名前の漢方エキス剤について考えてみました。
結論は、「やっぱり同じだけど違うよ!」だと思います。
究極的な違いは使われている生薬の質であったり、製剤化の違いによる味だったりではないかとも。

産地や天候によって、果物の味が変わる。
同じシュークリームでも、スーパーで売っているのとケーキ屋で売っているのでは味が違う。
…のと同じかもしれません。

生薬は天然由来のものが多いので、どうして品質にばらつきがあります。勿論、基準は設けられていますが、一般医薬品に比べると緩やかです。
具体的なデータとして示せるものではありませんが、製品によって効果の感じ方に個人差がでると思います。

味や粒子の大きさによる服用のしやすさも大きな違いです。
同じ方剤なのに、ここまで違うの…という場合もあります。

最近実感したのは生脈散しょうみゃくさんです。
何度か話題にさせてもらっている生脈散(「我が家のクスリ箱② 生脈散の使い方」)ですが、我が家では専らコタローさんのを使っていました。
煎じ薬だと五味子ごみしという生薬の影響か酸っぱさが気になるのですが、“生脈散エキス細粒G「コタロー」”は、ほのかな甘みとむせない程度の粉感(超個人的感想)で飲みやすい漢方薬の一つという認識でした。
たまたまイスクラさんの「麦味散顆粒ばくみさんかりゅう」をのむ機会がありました。
どちらも生脈散エキス剤で、含有量も同じです。
ですが、独特の苦味と喉に引っかかる顆粒の大きさ(超個人的感想)が私は気になりました。

やっぱり、同じではないです…。
のみやすくて続けやすいものを正しく使って、健やかな毎日を送っていきたいものです。



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