我が家のクスリ箱① 五苓散の使い方 

漢方

コロナ禍でセルフメディケーションの意識が高まったと言われています。
緊急性の低い症状は市販薬を使って経過を見る、必要に応じて受診する・・・そうした工夫を身につける事が大切だと思います。
応急処置に使う救急箱に常備するお薬は家族誰もが使えるもの、汎用性の高いものが理想です。そうした意味でも漢方薬はおすすめです。

以前に救急箱に入れておくとよい漢方薬をご紹介しました。(「救急箱にも漢方薬を 常備しておきたい漢方薬は?」
我が家の救急箱にも漢方薬がいくつか入っています。
今回はその中の一つ、「五苓散ごれいさん」のお話です。

ツムラ漢方 五苓散

どんな薬?

五苓散の構成をみてみましょう。五苓散は次の5つの生薬からできています。
沢瀉(たくしゃ)・・・利水・利尿の作用を有する。
茯苓(ぶくりょう)・・・利水・利尿の作用を有する。
猪苓(ちょれい)・・・利水・利尿の作用を有する。
蒼朮(そうじゅつ)・・・利水・利尿・補脾の作用を有する。代わりに白朮びゃくじゅつを使うことも。
桂皮(けいひ)・・・温めて気の流れを良くする。

5つの生薬のうち4つが利水・利尿作用のある生薬です。
利水作用とは、体内の水分の代謝異常を調整し正常に戻す働きのことです。
漢方では血液以外の身体の水分を「津液しんえき」と呼びます。この津液の巡りが悪くなる病態が「水滞すいたい」です。
五苓散は、水滞に用いる代表的な方剤です。

どういう時に使う?

五苓散は「水の遍在をなくす」といわれています。

「傷寒論」(張仲景が記した中国医学の古典)では、こう述べられています。

発汗シおわリテ脈さく煩渇はんかつスル者ハ、五苓散これつかさどル。

・・・発汗し、脈が浮(軽く触れると拍動を感じる脈)で数(脈が速い)、強い渇きで水を欲する者には五苓散を用いる。

五苓散を用いるポイントとして、さらに「傷寒論」では「尿不利にょうふり(尿量減少)」「水逆すいぎゃく(水を飲むと吐く)」を挙げています。
いずれも水分代謝に関わる現象です。

つまり、五苓散は「水分」が関わるトラブルを解消する薬です。
「水分」が関わるトラブルとは、どういったものでしょうか。
嘔吐下痢もそうですし、浮腫熱中症も水分代謝の異常です。
また、めまいや頭痛の原因の一つが「水滞」です。「水滞」が原因のめまい頭痛には、五苓散は良く効きます。
そして、二日酔いにも用いられます。

漢方薬は構成生薬が少ない程、効き目がシャープだと言われています。
5つの生薬でのみ構成されている五苓散も頓用(症状の出ている時に服用する)で著効する漢方薬の一つです。
ただし、あくまで「水滞」(水の偏在)を正す薬ですので、原因が別にあれば、勿論効きません。
雨の日に酷くなるような頭痛は五苓散を用いますが、項や肩が張る頭痛には葛根湯を用いることが多いです。
二日酔いについても、脂っこいものの食べ過ぎが加わると、五苓散より半夏瀉心湯の方が適している場合があります。
また、五苓散は体内において余分な水をさばき、必要な部位に水を送る働きがありますが、潤いを与える生薬は入っていません。五苓散を長期間服用している場合は別のアプローチが必要になってくるでしょう。
やはり、漢方薬を服用する際は証(体質と症状を合わせた、その時点での身体の状況)を見極めることが大切です。

とはいえ、急な吐き下し・熱中症・二日酔い・・・に先ず試してみてよい漢方薬ではあります。
2~3回の服用で良くなることが多いです。逆にそれで良くならない場合は、医師や薬剤師にご相談ください。
五苓散は、救急箱にストックしておきたい漢方薬の一つです。

注意することは…

五苓散は水の過不足がどちらに傾いても用いられる漢方薬ですが、体に滞った水をさばく燥性(乾燥させる働き)の生薬で構成されています。
水(潤い)を補う生薬は含まれていないので、長期間服用していると、どうしても潤い不足(陰虚いんきょ)に傾きがちです。

陰虚のケアが必要な妊活中の方や更年期のゆらぎ世代の方は、特に要注意です。
漢方薬に詳しい医師・薬剤師・登録販売者にご相談ください。

最後に…我が家の場合

息子が小さい頃の吐き下しには、先ず五苓散でした。服用しても直ぐに吐いて水分を受けつけない、熱が高い、下痢が治まらない…時は受診しましたが、五苓散で済む場合が多かったです。

夏休みの部活を終えて帰宅した息子が「ムカムカする」と言った時も五苓散を飲ませました。
ムカムカ感も含め熱中症かもと思った時に早めに飲むか、暑くなりそうな時は先に飲んでもいい…と数包渡したところ、数日たって「また頂戴」と言ってきました。
外で走り込みがある時に飲んでおくと、気持ち悪くならないし…と。
使い方はあってます。上手に使って熱中症予防、良いと思います。
でもね、五苓散飲む前に部活動の内容を考えた方がいいんじゃないかしら。少なくとも、夜更かしせず、朝ご飯をしっかり食べて部活に行こうよ・・・。

そんな事を思っていた時に、今度は母から電話。
「畑仕事行く前に五苓散飲んでおくと、足がつらないからええわ~。」
・・・ここにもいました。
いやいや、足がつる(脱水のサインですね)まで畑仕事しないでよ。
足がつるからと、芍薬甘草湯を毎回飲むよりはいいけれど。(調剤薬局で「夏はこむら返りがおきるから」と芍薬甘草湯を医師に処方してもらう患者さんが一定数います。芍薬甘草湯は飲み過ぎに注意が必要な漢方薬の一つです。)

どっちも五苓散を上手に使っているのだけど、養生も忘れないで欲しいと思いつつ・・・。
五苓散、良い薬です。

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