漢方の工夫がいっぱい詰まった本…だけど「ゆるい生活」になるまでの道のりはゆるくないかも?

漢方

漢方を勉強する仲間うちで少し話題になった本がこれ。

群ようこさんの「ゆるい生活」です。
群ようこさんの本は久しぶりです。以前は、椎名誠さんの大ファンだった関係で(群ようこさんは、椎名誠さん率いる本の雑誌社の事務員さんだったので)読んでいました。

群さんが50代の頃に悩まされた眩暈。飛び込んだのが漢方薬局。
そこで6年かけて取り組んだ体質改善の実録です。
10年近く前に刊行された本ですが、養生の大切さが記された内容は全く色褪せていません。

漢方薬局で群さんは「水はけが悪いタイプ」と断じられます。眩暈の原因の一つに水の巡りの悪さ、滞り(水滞)があります。

イメージとして捉えていただければ…ですが、滞った水の量が増えたり、時間がたつと重みを増し、ネバネバした状態となります。この状態を「痰湿」と呼びます。痰湿により、むくみや眩暈、吐き気、痺れや痛み等の症状を引き起こします。特に痰湿のダメージを受けやすいのは脾胃(≒消化器)で、冷たいもの・甘いもの・脂っこいものは避けた方が良いと言われています。

…群さんが「甘いもの禁止」と言われてしまった所以ですね。

しかし、かなりの甘いもの好き(量もかなり)の方が、ここまでストイックになれるとは…。水分の量にも気をつけ、食事の内容にも気をつけます。何でもかんでも「好きだから」とやり過ぎない(特に夜)ようにも。
ある意味「ゆるくない生活」とも思ってしまいました。これを守れた群さんは、かなり優等生な患者さんかもしれません。もしくは、それだけ現状が辛かったか…。

漢方薬局を訪れる多くの方は、病院での治療に満足いかなかったり、辛い症状を訴えても「検査では(西洋医学的に)異常はありません」と突き放された(と感じた)方です。

群さんも眩暈とは別に、受診しても症状が改善しなかったことがあったそうで、その時のことを「医者を信じすぎてはいけないとつくづく思ったのと同時に、医者はいつも何 でも治してくれるわけではないのだと悟った。」と述べられています。これって、とても大事だと思います。

薬局でも病院や自分の不調と医師の不満を語る患者さんがいらっしゃいます。「医師せんせい、それはないよ…。」と気の毒に思う場合もあれば、「医師せんせいも大変だな…。」と思う場合もあります。後者の場合に必要なのが、この悟りだと思います。

医学は万能ではありません。人の命に限りがある以上、どこかで限界がでてきます。そうなった時に、どこで納得(受け入れる)するかを判断し、その中で少しでも生活の質をあげる工夫をしていかなければなりません。その為にも自分の身体のことを人任せにしない、自分の身体の状態を知っておくことが大切です。

体調が悪くなったとき、何に信頼を置くかというのは、人それぞれだ。西洋医学でも 漢方でもいい。基本は自分の体を見てくれる人が信頼できるかどうかしかない。(中略)生き物には永遠の命はないのだし、それまで自分が選択し納得して過ごすことが、大事なのだと思うのである。
…私もそう思います。

さて、時には我慢をしながらの養生生活を送って体調を取り戻した群さん。
ある猛暑の日に、別件で訪れたコンビニで”ガリガリ君“に誘惑されて2本まとめて食べてしまいます。
そして…。
今日はこれでいいんだと納得した。たまにはこれくらいしないと息が詰ま る。その後、体調にも変化がなく、無事に過ぎている。還暦を過ぎると、予想もしなかった問題も起きてくるはずだ。が、これからもこのような感じで、基本は押さえつつ、ゆるく生きていければいいなと思っている。
…やはり「ゆるい生活」でした。私もそうありたいと思います。

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