しくじり漢方⑫ 痩せる漢方薬…まだ続ける?防已黄耆湯の落とし穴

漢方

「漢方が好き!」と言いながら、若い頃は雑多な知識を寄せ集める事しかできず、恥ずかしい失敗談は数知れず。私に限らず、一般の医療従事者(医師も含め)は漢方を勉強する機会が、西洋医学に比べて圧倒的に少ないものです。
なので、漢方家の方からすれば「えっ??」と思われるようなエピソードも数知れず。

今回は、防已黄耆湯ぼういおうぎとうのお話。
前回お話した防風通聖散ぼうふうつうしょうさん(「しくじり漢方⑪ 痩せる漢方薬…まだ続ける?防風通聖散の落とし穴」)と同様、“ダイエット漢方薬”として有名な漢方薬です。

ある日、薬局で…

「漢方薬で血圧上がりますか?」

そう尋ねられた50代の女性患者さん。
血圧が上がってきていることを内科医に指摘されて、整形外科で処方されていた漢方薬が気になったとのこと。お薬情報に「血圧上昇」の文言があったのを気にされたようでした。

お薬手帳を拝見すると…。

ツムラ防己黄耆湯 7.5g 1日3回 毎食前 28日分
ツムラ芍薬甘草湯 2.5g 1日1回 夕食前 14日分

「膝の痛みにお困りですか?」とお尋ねすると…。

「芍薬甘草湯は、こむら返りの時にのんでいます。防己黄耆湯はダイエットで。3年ほど続けていますが、全く痩せません。」

えっ??

そもそも防己黄耆湯って…

防已黄耆湯は、体内の余分な水を出し、肌のバリア機能を整える漢方薬です。
その特性から、多汗症や膝の痛み、いわゆる「水太り」の方のダイエットにも使われます。
防風通聖散とは別のタイプの“ダイエット漢方薬”として有名です。

「ダイエットに良いと聞いて…」と、防已黄耆湯を何年も飲み続けていた患者さん。
血圧の上昇をきっかけに、「もしかしてこの漢方薬の副作用…?」とご相談を受けました。

漢方薬にも頻度や程度は低めとはいえ、副作用はあります。(「漢方薬に副作用はないのか?」)
特に、甘草かんぞうの過剰摂取による副作用は要注意です。
甘草は漢方エキス製剤の約7割に含まれている生薬です。また、ショ糖の約150倍の甘みを有するともいわれ、甘味料として菓子等に多く使われています。
エキス製剤を2種類・3種類・・・と組み合わせることにより、甘草の摂取が増えてしまうと、むくみや血圧上昇等の副作用が起きやすいといわれています。

お薬手帳の記録にあった防己黄耆湯にも芍薬甘草湯にも甘草が含まれています。
ただし、防己黄耆湯に含まれている甘草の量は過剰といえる程ではなく、芍薬甘草湯に含まれる甘草の量は多いものの、こむら返りに単回で使う程度であれば、血圧の上昇の直接要因が漢方薬とは断定しにくいと考えられます。
ですが、効果を感じないままダラダラと服用を続けるのは考えものです。

最後に…

一見すると、色白でポッチャリ、汗かきでむくみやすい…という「防已黄耆湯タイプ」に見える方でした。それなのに、なぜ何年も効果が出なかったのか?

​それは、表面上の「むくみ(水滞)」の奥に隠れた、本当の原因(冷え、気の滞り、胃腸の弱りなど)にアプローチできていなかったからかもしれません。

​漢方は「症状のチェックリスト」だけで選ぶと、本来の力を発揮できないことがあります。一人ひとりの体の状態を深く紐解く「弁証べんしょう(体の見立て)」があってこそ、本当に必要なケアが見えてきます。

​「なんとなく何年も同じ漢方を飲んでいる」

そんな心当たりのある方、一度お薬や体質を見直してみませんか?

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