ひと昔前には、漢方薬の話をすると「でも、家で煎じるのでしょ?無理よ。」と仰る患者さんが少なからずいらっしゃいました。
今では顆粒や錠剤のエキス剤を思い浮かべる方が多いと思います。
今回は、漢方薬の種類(剤形)についてご紹介いたします。
①湯剤(煎じ薬)
生薬を水から加熱して煮だした(煎じた)ものです。1日量を煎じて、2-3回に分けて飲みます。
②散剤
生薬を粉末にして混合したものです。「五苓散」等、「○○散」という処方がそれにあたります。
③丸剤
生薬を粉末にして混合、蜂蜜等を加えて丸く固めたものです。「桂枝茯苓丸」等、「○○丸」という処方がそれにあたります。
④エキス剤
湯剤・散剤・丸剤として服用されていたものからエキスを抽出し、水分を蒸発させてできた乾燥エキス剤を顆粒剤・錠剤・カプセル剤に加工したものです。
通常、「エキス剤か煎じ薬か」という話になります。
煎じ薬はエキス剤よりも効果が高く、症状に合わせて生薬を加えたり除いたりする事ができます。「煎じ薬がドリップコーヒーならエキス剤はインスタントコーヒー」、「煎じ薬がテーラーメイドの服ならエキス剤は既製服」などと言われる所以です。
同じ名前の漢方薬でも、エキス剤では効かなかったけれど、煎じに切り替えると効果があった・・・という話をよく聞きます。
「やっぱり煎じでないと。エキス剤は効き目が薄い。」と漢方薬局ですすめられることもあります。(煎じ薬で効き目がダイレクトにでるとファンになってもらいやすい、エキス剤よりも他で手に入れにくいので続けて来店してもらいやすい…といった側面があるのかもしれません。)
では、本当に「漢方薬は煎じが良い!」のでしょうか。煎じ薬は、毎日決められた方法で生薬を煎じ、それを2-3回に分けてのみます。1日分として数種の生薬がパックされた漢方薬を土瓶・やかん・鍋に水と一緒に入れて煮詰めるのですが、鍋の種類・火加減・時間で煎じ薬の内容にバラつきが生じるのは容易に予想されます。煎じるのは患者さんやそのご家族です。薬局で説明した通りにしていただいているかは、神のみぞ知る…です。(西洋薬でさえ、薬局での説明とは違う思わぬ使い方をされていることがあるというのに!!)
確かにエキス剤は漢方薬の長い歴史を考えると、当初とは違う形態である分、全く同じ効果は期待できないかもしれません。ですが、メーカーで管理されている製剤ですので、一定の品質が保たれています。
一方、エキス剤は保管や携帯がしやすく飲みやすいです。
個人的には、エキス剤で解決できるのであればそれに越したことはないと思っています。保管や携帯が容易で、味のハードルも低いです。日々の生活で「便利さ」というのは大事かと。
各々の利点を上手に活かして、健やかな毎日を…。
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