患者な薬剤師⑤ 〜さよならコンタクトレンズ編 あるいは眼のアレルギーのお話〜

薬局から

若い時分、ドクターとお話するのは問い合わせの電話対応やMR同行(製薬会社時代)であったり、疑義照会(薬局で←「薬剤師って…」参照)の時でした。
年を重ねるようになって、自分や家族が受診する際にドクターと話す比率が増えてきました。
当然、仕事での会話と患者やその家族としての会話は、話す内容も違えば、感じ方も違います。

今回はコンタクトレンズにまつわるアレコレ…です。

わが友コンタクトレンズ

16歳からハードコンタクトレンズを使用していましたが、年々つけ心地が悪くなってきました。
充血・痒み・レンズの汚れ…等々、トラブルが増えてきました。花粉を主とするアレルギーが原因だと思います。
コンタクトレンズの定期検診も兼ねて、アレルギーの目薬をもらいに受診するのですが、問われるまま症状を話す私に眼科の医師せんせいが放つ、一言が正直ツライ…。
「コンタクトレンズをオススメしてる訳じゃないですから。」
つれないよ、医師せんせい…。尋ねられたから話したのに・・・。某大手コンタクトレンズ屋さんの真ん前の眼科でそれはないでしょう…とちょっぴり恨み節。

異物であるコンタクトレンズが眼に良い訳がないことは重々承知しています。
ソフトコンタクトレンズにしろハードコンタクトレンズにしろ、酸素透過性が良くなったとはいえ、角膜内皮細胞へのダメージは免れません。それを最小限に防ぐには装着時間を守る事が大切です。
また不適切な取り扱いで細菌感染を引き起こす事もあります。
コンタクトレンズが引き起こす眼障害を軽く考え、いい加減な使い方をしてしまう人達がいる以上、医師せんせいの口調が強くなるのも仕方がないかもしれません。

でも、私にコンタクトレンズをすすめたのは他ならぬ眼科医です。
何故なら、子供の頃から視力の左右差が大きかったから。
左右の度数が違い過ぎると、眼鏡で両目の視力を引き出すのは難しいといわれています。左右の度数が極端に違うレンズで眼鏡を作ってしまうと、物が歪んで見えてしまったり、頭痛が起きやすくなったりします。度数が違い過ぎると、左右で見える像のサイズが異なり、物の見え方がちぐはぐになってしまうからです。
当時お世話になっていた眼科医には「高校生ぐらいになったら、コンタクトレンズを使ったらいいよ」と言われていました。
コンタクトレンズであれば、左右の視力に応じたレンズを装着することができ、眼鏡に比べて見え方が快適です。
3年(が目安なので)おきの買い替えに定期検診、洗浄保存もきちんとして、ハードコンタクトレンズと上手く付き合ってきました。

ですが、30歳を過ぎたあたりから3年を待たずに買い替えをすすめられるようになりました。
理由は汚れです。
丁度、その辺りから「花粉症?」と思う症状がでてきました。アレルギー反応による目の分泌物の増加がレンズに汚れが付着する要因となったと考えられます。
汚れが付着したレンズは酸素透過性も低くなり、汚れ自体が炎症を起こす原因にもなります。
こまめにレンズを洗浄したり、アレルギーを抑える目薬を使ったり、装着時間を短くしたり・・・色々工夫しながら使っているところへ、冒頭の医師せんせいのお言葉です。

第一の敵はアレルギー、第二の敵は・・・老眼!!

あれっ?と思うようになったのは、調剤室で一包化の監査をする時でした。
一包化とは服用時点が同じ薬を一袋にまとめることで、患者さんにお渡しする前に錠剤の色・識別番号(最近は名前を刻印してくれているものもあり助かります)等を見て、間違いなく袋詰めされているかチェックしていきます。この錠剤に刻印されている番号が見辛くなってきたのです。
年配の薬剤師さんは老眼鏡を首に下げたり、大きなルーペを使ったりされています。
「ついに、私もかっ!」と思いました。
そして、一包化の監査だけだった見えにくさを読書やスマホ画面を見る時等、様々な場面で感じるようになりました。
コンタクトレンズは遠くが見えるように矯正しています。近くを見る時にできていたピント調節が加齢と共にうまく機能しなくなる…老眼ですね。

緑内障のフォローをしてもらっている眼科医(コンタクトレンズと緑内障で、私の眼の主治医は二人います。好ましい事ではないのですが…。)に相談したところ「試しに百均で老眼鏡買って、コンタクトつけた目で使ってみたら?」と言われました。
そんなので、いいのかい?と思いつつ、一番度の弱いのを買って使ってみました。…うん、小さい字もよく見えます。でも、少しでも視線がずれて他を見ちゃうとボヤけて気持ち悪い…。
慣れの問題かもしれないけれど、そこまでしてコンタクトレンズを使わなくてもいいかなと思うようになりました。

実は、老眼に関しては視力に左右差があるのがプラスに働き、裸眼では遠くはともかく(近視で見えない)近くを見ることに不便を感じていません。モノビジョンというらしいのですが、左右差があると、普段から遠くを見る時の目と近くを見る時の目を使い分けているらしいのです。眼鏡も左右の度数の差を少なくするため、同じような見方をしています。片眼で見ているのと同じ感じなので、立体的に捉えづらい、疲れやすい…のですが。

遠近両用のコンタクトレンズも知人から薦められました。だた、ハードレンズの遠近両用は眼鏡のそれと同じ構造(上半分が遠用・下半分が近用)で、ソフトレンズの遠近両用(年輪のように度数が中心部から徐々に変化している)の方が見え方が自然だそうです。この歳でソフトレンズの装着練習をする勇気?もなく、結局コンタクトレンズを卒業しました。
私に限らず、アレルギーや老眼を機にコンタクトレンズの使用を止める方は多いようです。

最後に薬剤師の視点から…点眼薬の使い方とあわせて

コンタクトレンズは高度管理医療機器です。オシャレ用のカラーコンタクトレンズ(目の健康を考えると個人的にはオススメしたくない…)も同様です。やはり、眼科医の指導の下での使用、定期的な検査は必要です。

花粉症等、目にアレルギー症状がでている時はコンタクトレンズの使用は避けるのがベストです。
でも、わかっていてもコンタクトレンズを使わざる得ないケースもあることでしょう。私もそうでした。

その場合、レンズに薬剤が付着するのを避ける為に点眼後10〜15分してからコンタクトレンズを装置します。コンタクトレンズ装着時の不快感を取り除く人工涙液の一部等を除き、点眼はコンタクトレンズを外して行うのが原則です。

レンズに薬剤が付着することで問題になってくるのは、レンズの変質・変形(特にソフトコンタクトレンズ)と付着した薬剤に角膜が長く曝露されることです。多くの目薬で使用されている防腐剤(ベンザルコニウム塩化物)が角膜障害を引き起こす可能性があるからです。

短期間に決められた用法を使用する場合、角膜障害の副作用が起きるケースは殆どありませんが、使用が長期に及んだり、ベンザルコニウム塩化物が付着したレンズを装着し続けたりすると、その可能性が高くなります。

でも、抗アレルギー薬と呼ばれる、花粉症等の目の痒みに用いられる目薬の多くは1日4回の点眼。
「日中にコンタクトをわざわざ外して目薬をさすなんて…」となります。
そして、多くの患者さんは「コンタクトをしていない朝・晩だけ点眼する。(回数を減らす。)」、「コンタクトをしたまま点眼する(だって、痒いから。)」のどちらかを選択するようです。

1日4回の目薬を2回にしても症状が改善されているのであれば、問題ないと考えられます。
気になるのは「したまま点眼」。
ハードコンタクトレンズや1Dayの使い捨てソフトコンタクトレンズでは影響が少ないともいわれていますし、コンタクトレンズの使用状況や症状の重症度によっては「問題ない」と考えるドクターもいらっしゃいます。
ですが、やはりベンザルコニウム塩化物の影響については頭に入れておくべきかと思います。

「したまま点眼」をせざる得ない日常生活を送っている方の場合、妥協点としては角膜障害のリスクの少ない防腐剤を用いているか防腐剤を使用していない目薬を選択する事となります。
ベンザルコニウム塩化物を使用していない、かつコンタクトレンズ装着時の使用が可能とされている医療用の抗アレルギー点眼薬は、現時点では「エピナスチン塩酸塩点眼液(商品名:アレジオン点眼液他)」のようです。(ただし、カラーコンタクトレンズは検討されていない為、不可。)各社から後発品(ジェネリック)が販売されていますが、私が調べた限りでは先発品のアレジオン点眼液と同じ防腐剤(ホウ酸)が使われています。
また、従来のエピナスチン塩酸塩点眼液(0.05%)よりも高濃度(1.0%)で持続性を高めた製剤(商品名:アレジオンLX点眼液0.1%)があり、こちらは防腐剤フリーなのでより安全と考えられます。
ただ、持続性が高まり「1日2回」の点眼となったので、個人的には、朝(コンタクトレンズをつける前)と晩(コンタクトレンズを外した後)に点眼すれば敢えて装着時に使わなくても・・・とも思います。
アレジオンLX点眼液0.1%の後発品発売予定はありますが、現時点では先発品のみです。

ただ、防腐剤フリーで気をつけなくてはならないのは、雑菌等に汚染されやすいということです。以前にもお話しました(患者な薬剤師② 〜緑内障編その2「目薬っていつまで使っていいの?」〜)が、開封後の取り扱いにはご注意下さい。

ちなみにエピナスチン塩酸塩点眼液と同じぐらい処方されることの多いアレルギーの目薬に「オロパタジン点眼液(商品名:パタノール点眼液他)がありますが、こちらは先発品・後発品共にベンザルコニウム塩化物を使用しており、「点眼後10分以上経過してからコンタクトレンズを装着すること」と添付文書に記載されています。

繰り返しになりますが、アレルギー症状がでている時はコンタクトレンズの使用を中止する、点眼はコンタクトレンズを外して行うのが原則です。
また、コンタクトレンズを装着したまま点眼治療を行っても問題ない眼の状態かどうかは、ドクターに判断していただくのが良いかと。
花粉症の季節、アレルギーの目薬は耳鼻科や内科でも処方してもらえます。
ですが、「コンタクトレンズの定期検診、そんなに行けないよ」という方は、この機会に目薬をもらいに眼科受診されては如何でしょうか。

おまけの話・・・。
コンタクトレンズを卒業した私ですが、眼鏡の見え方が良い訳ではなく、紆余曲折の度数合わせが続いています。
そんな私に眼科の医師せんせいのお言葉。
「白内障の手術をしたら、左右の度数が同じになるんだけどね。」
・・・そりゃそうだ。濁った水晶体を人工のレンズに取り替えるのだから。まだまだ先だ!と思いたいけれど。
コンタクトレンズ卒業の後は、次のステージ?が待っているようです。

※現時点とは、2023年4月現在です。また、この記事は参天製薬ホームページ(医療関係者用サイト)を参考にいたしました。

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