中医学 事始め① 〜漢方いろいろ〜

漢方

ブログを始めてから、半年近く経ちました。

「漢方ライフ」と謳っておきながら、「漢方」のカテゴリーが中々増えません(ごめんなさい💦)が、私自身は自分史上?最も漢方づくしの日々を送っています。

実は、改めて「中医学」の勉強を基礎からする事にいたしました。

「ふむふむ知ってるよ」から「そうだったのか!」「わかんな〜い…」まで、学んだ事を追々お伝えできるよう、日々精進中です。気長にお付き合いいただければ、嬉しいです。

はじめに

ホームで、「漢方」とは「中国生まれ日本育ちの医学」「漢方薬は勿論の事、鍼灸や食を含めた養生(生活指導)をトータルに組み合わせた医学」とご説明いたしました。

その「漢方」には、大きく二つがあります。
日本漢方
中医学
・・・です。

細かい違いは沢山ありますが、おおまかな違いは診断方法と治療に用いられる漢方薬のバリエーションです。

今回は、「漢方」と呼ばれるものの中身(流派)について、ご紹介いたします。

日本漢方

漢の時代に体系化された中国医学は、朝鮮半島から渡来してきた医師や遣隋使、遣唐使などによって伝えられ、平安時代に定着していきました。
そして、室町時代以降も明から帰ってきた留学生らよって様々な治療理論が日本に伝わり、曲直瀬道三まなせどうさんらによって発展していきました。
その一方、江戸時代には実用医学の古典である「傷寒論しょうかんろん」を原典として、より実用的な医学を目指す流派が登場しました。吉益東洞よしますとうどうらによって発展したこの流派を「古方派こほうは」と呼びます。中国ではあまり重視されない「腹証ふくしょう」(腹部の状態から合う薬を考える)を重視するのが特徴です。
対して、曲直瀬道三らの流派は「後世派ごせいは」と呼ばれています。
そして江戸中期から末期にかけて、「古方派」と「後世派」の対立の中で両者の立場をとる「折衷派せっちゅうは」が現れ、現在まで続く「日本漢方」の姿となりました。

私が最初に触れたのは、この日本漢方でした。

日本漢方の特徴は方証相対ほうしょうそうたい(処方と証が対になっていること)です。これは、症状(証)からダイレクトに治療に用いる処方(漢方薬)を決めるというシステムです。
例えば葛根湯かっこんとうという処方(方)は、「寒気が強く、肩が強張り頭痛がする。汗はでていない。」という症状(証)に用いられる・・・という具合に、個々の症状を処方を決める手がかりにしています。

さて、明治時代に西洋医学に取って代わられた漢方は冬の時代を迎えます。
ですが、昭和に入り西洋医学の限界が指摘され、1967年から漢方薬の保険適用が認められるようになりました。
ドラッグストア等で購入できたり、医院等で処方される漢方エキス剤は、ほぼ日本漢方の考えをもとにした製剤といえます。

中医学

中医学とは、中国の伝統医学をさします。
中国においても日本と同様、西洋医学の波にのまれ衰退の時期がありました。しかし、第二次世界大戦後に西洋医学と並び国定医学として整備され、「陰陽五行いんようごぎょう」(中医学 事始め② ~世界は陰陽五行でできている?)をはじめとする膨大な理論を進化させて今にいたっています。

中医学の特徴は何と言っても理論重視の弁証論治べんしょうろんち(理論から病気の状況=証を読みとり、治療法を考えること)です。
八綱弁証はっこうべんしょう」(症状を陰陽・表裏・寒熱・実虚というカテゴリーに分類する)や「臓腑弁証ぞうふべんしょう」(五臓六腑のどこに問題があるか)という方法で理論的に証を決め、それに合った処方を作り出していきます。
「傷寒論」等に記されている「○○湯」といった方剤を用いるだけでなく、各々の証に応じた生薬を加減して用いるので、よりオーダーメイドな治療といえるかもしれません。日本漢方よりも使う生薬の種類や分量が多いのも特徴の一つです。

「中国の伝統医学なのだから、日本の“漢方”の流派の一つにしちゃっていいの?」という声も聞こえそうですが、日本で行われている「中医学」は、中国でおこなわれている「中医学」とはやや異なります。
日本の気候や風土、日本人の体質を考慮した「中医学」も本場の「中医学」とは異なる「中国生まれ日本育ちの医学=漢方」の一派です。

さいごに

「漢方」と名のつくものについて、ご紹介いたしました。

それぞれ長所・短所があります。
日本漢方は症状と漢方薬が結びつくのでシンプルでわかりやすいです。ただ、経験則が重視される為に中医学を良しとする先生方からは「行き当たりばったり」と批判される事もあります。
中医学は理論がきっちりしているので、難解ではあるもののテキストがあれば、豊富な経験を持つ「漢方の師匠」(日本漢方では重要な存在です)を探さなくてもいいかもしれません。使用する生薬の種類も多いので、よりオーダーメイドな治療が可能です。ですが、日本漢方を良しとされる先生方からは「理論ばかりふりかざしている」と批判される事があり、臨床では理論通りいかない事も多くあります。また、中医学ほどではないものの日本漢方で使用する方剤は200種類以上あるので、決して日本漢方の選択肢が少ない訳ではありません。

ですが、健やかな毎日を願って「漢方」を求める人々にとって、「日本漢方」「中医学」の区別なんてどうでもよいことでしょう。
「日本漢方」も「中医学」も辛い症状や問題を抱えている目の前の人を何とかしたい…という思いは同じはずです。

そして、それぞれで示される「養生」は漢方薬を使わない方達にとってもオススメしたい事ばかりです。

それぞれの良いところを上手に使って、「健やかな毎日」の為のお手伝いができればと思う今日この頃です。

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