「漢方が好き!」と言いながら、若い頃は雑多な知識を寄せ集める事しかできず、恥ずかしい失敗談は数知れず。私に限らず、一般の医療従事者(医師も含め)は漢方を勉強する機会が、西洋医学に比べて圧倒的に少ないものです。なので、漢方家の方からすれば「えっ??」と思われるようなエピソードも数知れず。
今回は、随分と前の調剤薬局での出来事です。
新規の調剤薬局を任され、バタバタしている時に飛び込んできた、門前でないクリニックの処方箋。
処方1)クラシエ小柴胡湯 7.5g 分3毎食前 28日分
すぐにお渡しできるのはツムラのものしかない、クリニックにメーカー変更の打診をしようと考えていたところ、ご本人のお言葉…。
「こっちの方がのみやすいんだよ。悪いけど、取り寄せてくれる?」
そうでしたか…。
確かに顆粒と細粒で、お口の中の溶けやすさは違うかも。
唾液分泌が少ない年配の方なら、尚の事、のみやすさは随分と変わるでしょう。
味もメーカーによって違いがあります。
どれも煎じ液を凍結乾燥させたものですが、賦形剤等の違いで変わってくるのでしょう。
漢方薬に限らず、“のみやすさ”は継続服用のポイントになります。
もう一つ、メーカーを変更する際に注意しなければならないのは、構成生薬と含有量です。(「同じだけど違うもの?違うけれど同じもの?…漢方エキス剤の中身を考える」)
例えば、柴胡加竜骨牡蛎湯はメーカーによっては瀉下作用のある大黄が含まれています。
葛根湯ですら、構成生薬は同じでもメーカーによって比率が異なります。
漢方薬に精通しているドクターほど、明確な処方意図で処方箋をだされているかもしれません。
話戻って、“のみやすさ”ですが…。
大切だと解っていて、それでも敢えて意地悪な思いになる時があります。
「本当に生命に関わるような場合でも、剤形や味の選り好みをしちゃうかな」
…と。
「粉の咳止め?粉薬が苦手なのに。これしかないの?」
…はい、ないです。今は、本当にないのです。
体力を著しく消耗させる、夜も眠れない程の咳ならば、粉薬でも服用できる工夫を一緒に考えさせて欲しいです。
でも、そうでないならば…。
「取敢えず病院へ」「取敢えず薬」の結果なら…。
漢方薬も同じです。漢方薬をのまず、養生のみで身体を整えていく選択肢もあります。
漢方薬が苦手なのに、渋々、無理して服用を続けるのはストレスのもと。
「その人にとって丁度良いところ」を目指す漢方の趣旨からも外れると思います。
そして、苦手であっても「効いた!」という実感があれば続けられることも。
一人一人に合った方法を探すお手伝いができれば嬉しいです。
このお話、実は“クラシエ”が“カネボウ”と呼ばれていた頃のこと。
あの頃のような失敗はなくなりましたが、漢方は奥が深く
「えっ?そうだったの…」
「知らなかった…」
ということは今だに沢山あります。
無知を知り、恥じる日々…。
学びは生涯続きます。
「明日死ぬかのように生きよ。 永遠に生きるかのように学べ。」
…マハトマ・ガンディー
コメント