漢方薬の値段のお話 ~やっぱり漢方薬は高いのか?~

漢方

漢方薬に対するハードルの一つは「値段」ではないでしょうか。
今回は「高い!」と言われる漢方薬のお値段のお話です。

多くの漢方薬局が「相談無料」をうたっているとはいえ、「買わずに帰りづらい」「高価なものを薦められたら、どうしよう」…等、二の足を踏む方が少なからずいらっしゃいます。

確かに煎じ薬はエキス剤よりもお値段は高めです。
妊活やアンチエイジングに用いられることの多い“補腎薬”と呼ばれる動物性生薬も高価なものが多いです。
ですが、使われる生薬によって価格は様々です。
漢方相談では、予算を伝えて、価格の説明をしてもらうと良いでしょう。
効果に違いはあるものの、予算に応じた漢方薬や養生の工夫を説明してくれるはずです。
オンラインの相談は、漢方薬局に入るよりもハードルが低いかもしれません。

実は、私の母は10万円を懐に入れて漢方薬局にやって来ました。
整形外科でどうにもならなかった足腰の痛みで鬱々している彼女に漢方薬を薦めた時のことです。
知人の漢方薬局は保険調剤薬局でもあったので、漢方薬の知識がある門前のドクターに紹介状をだして、処方してもらいました。
痛みが改善し、表情が明るくなってきた母が「漢方薬って高いと思っていたから、10万おろして行った」と話してくれたのでした。
その後はドクターと相談しながら、処方をマイナーチェンジしつつ今にいたっています。

健康保険でまかなえる漢方薬であれば、ドクターに処方してもらうのが負担が少ないと思います。
既往症があり、常用している薬があるなら、主治医に漢方薬の併用を把握してもらう意味でも良いことかと考えています。

ただ、漢方薬の止め時や変え時の判断ができる人間が必要だと思います。
調剤薬局に勤めていると、ずっと同じ漢方薬が出されている処方箋を目にします。年単位のことさえあります。効果も定かでないまま万全と処方されているケースも珍しくありません。
だからこそ、断片的な情報だけで“試しに”ドクターに漢方薬の処方箋をだしてもらうのは、考えものです。そもそも、美容や予防目的では健康保険の対象外です。

もう一つ、残念でもあり、心配でもあるのは、漢方薬局で聞き出した方剤をネットやドラッグストアで手に入れることです。
漢方薬局の無料相談で何とか聞き出した「○○湯」や初回で処方してもらった「〇△湯」、ネットやドラッグストアの方が安く手に入るかもしれません。
ですが、同じ名前の漢方薬でもメーカーによって含有量や構成生薬が違います。当然、効き方が変わってしまう場合があります。好ましくない作用があらわれることさえあります。
そして、先程のお話と同様、服用後のフォローをしていくには相応の知識が必要になります。期待した結果とならず、”安物買いの銭失い”となり、「漢方薬なんて効かない」となるのは、とても残念です。
個人的には、それなりの時間を費やして力になろうと尽力された漢方薬局がリスペクトされず、相応の対価が支払われないのも気の毒だと思います。

最後に…。
漢方薬は本当に「高い」のでしょうか。

月に数千円から数万円はする漢方薬。
「マッサージに通うことがなくなったのだから、安いもの」と仰る方もいらっしゃれば、
「月にこれだけ払うなら、エステに行く方がいい」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
「外食の値段と同じぐらいなら、自分の身体の為に」と考える方も。
漢方薬の価格は様々、「安い」「高い」の感じ方も様々だと思います。

そして、漢方薬が西洋薬に比べて「高い」訳ではないです。
例えば、風邪をひいたと慌てて医院へ受診、薬局で薬をもらった場合。
処方された薬にもよりますが、3割負担の場合は医院と薬局で2000-3000円程度支払うことになります。
自宅に常備している薬、適切な食事と休養なら、ここまでの金額にはならないはずです。基礎疾患があって重篤化のリスクがある方等、例外はありますが、その後の経過は双方変わらないことが多いように思います。

また、西洋薬でも高価なものはあります。その上、個々の症状で薬剤の数が増えていってしまうと負担も増します。漢方薬で上手く対処できれば、そちらの方が負担が少ないかもしれません。

漢方薬に限らず、無理なく正しい方法で健やかな毎日を…。

コメント