コロナ禍でセルフメディケーションの意識が高まったと言われています。
緊急性の低い症状は市販薬を使って経過を見る、必要に応じて受診する・・・そうした工夫を身につける事が大切だと思います。
応急処置に使う救急箱に常備するお薬は家族誰もが使えるもの、汎用性の高いものが理想です。そうした意味でも漢方薬はおすすめです。
以前に救急箱に入れておくとよい漢方薬をご紹介しました。(「救急箱にも漢方薬を 常備しておきたい漢方薬は?」)
我が家の救急箱にも漢方薬がいくつか入っています。
今回は「生脈散」のお話です。
どんな薬?
生脈散は3つの生薬から構成されています。
人参(にんじん)…脾(≒胃腸)の力を高め、気(≒エネルギー)を補う。
麦門冬(ばくもんどう)…潤いを増やす。
五味子(ごみし)…無駄な発汗を抑え、津液(水分)の消耗を防ぐ。
生脈散という処方名は、「身体のエネルギーや水分の消耗を防ぎ、弱くなった脈を回復する」働きを意味しています。大量の発汗や肉体疲労で消耗した全身の機能低下を改善します。
どういう時に使う?
エネルギー(気)と水分(陰)が不足している状態(気陰両虚)に用います。こうした状態は汗をかき過ぎた時に起きやすく、夏バテの諸症状(倦怠感・食欲不振等)に良く効きます。
前回ご紹介した五苓散(「我が家のクスリ箱① 五苓散の使い方」)が急性期に頓服で用いられることが多いのに対して、滋養に継続して服用することが多い漢方薬です。
同じく気陰両虚の方剤に清暑益気湯があります。清暑益気湯は生脈散をベースに気や血を補う生薬(黄耆、当帰)等が加えられた方剤です。
漢方薬は構成する生薬の数が少ないほど効き目がシャープといわれています。
先ずは生脈散を試す、症状が続くなら補気・補血作用の加わった清暑益気湯を用いるのも良いでしよう。
また、生脈散はOTC(一般用)医薬品のみ、清暑益気湯は医療用医薬品のみの取り扱いです。
単純に自分で買うなら生脈散、病院でもらうなら清暑益気湯…でも良いかと思います。
ただし、同じ夏バテでもクーラーで身体を冷やし過ぎてだるい・冷たいものを摂り過ぎて食欲不振…といった場合は、補中益気湯や六君子湯が適しています。(「漢方薬で夏を乗り切る!」)
生脈散や清暑益気湯を使うポイントは「暑さ」と「汗」と覚えておくと良いでしょう。
最後に…我が家の場合
我が家では夏場にストックしておく漢方薬です。
汗かきで胃腸の弱い(ついでに痩せ型。漢方でいうところの気虚タイプ。)夫、「汗でビショビショになる夏は大嫌い」だそうです。なのに、仕事の都合で外出続きになると消耗しきって帰ってきます。とにかく身体が重いようで。
そんな時に生脈散です。使っている生脈散は「1日2回」ですが、外出が多くなると予想される前後で1日1回の服用を続けていると身体が楽だそうです。
暑熱順化でしょうか、息子は夏休み半ばを過ぎる頃には「五苓散、頂戴」と言わなくなります。ですが、汗だくになる部活(着替えのTシャツの枚数も半端ない)が続くと、「今日も部活か…。だるい…。」となります。
そういう時にも生脈散が良いようです。
梅雨が終わって連日猛暑の頃、母から電話がありました。「畑の草抜きを頑張り過ぎた。熱中症だと思って五苓散を飲んでいるけれど、すっきりしない。」と。
そこまで頑張らないでよ!と思いつつ、生脈散をすすめたところ「あれ、良かったわ」と。
・・・それは良かった。水をさばく方剤から補う方剤に変えて著効した例だと思います。
8月も下旬です。残暑が厳しい中でも秋への準備が必要な時期になってきました。
湿邪や暑邪で脾胃を傷めやすい夏から、燥邪(乾燥)で肺を傷めやすい秋へと移り変わります。
夏に失われた潤いやエネルギーをしっかり補って、秋に備えたいですね。
…生脈散、良い薬です。
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