我が家のクスリ箱② 生脈散の使い方

漢方

コロナ禍でセルフメディケーションの意識が高まったと言われています。
緊急性の低い症状は市販薬を使って経過を見る、必要に応じて受診する・・・そうした工夫を身につける事が大切だと思います。
応急処置に使う救急箱に常備するお薬は家族誰もが使えるもの、汎用性の高いものが理想です。そうした意味でも漢方薬はおすすめです。

以前に救急箱に入れておくとよい漢方薬をご紹介しました。(「救急箱にも漢方薬を 常備しておきたい漢方薬は?」
我が家の救急箱にも漢方薬がいくつか入っています。
今回は「生脈散しょうみゃくさん」のお話です。

コタロー 生脈散

どんな薬?

生脈散は3つの生薬から構成されています。
人参(にんじん)…脾(≒胃腸)の力を高め、気(≒エネルギー)を補う。
麦門冬(ばくもんどう)…潤いを増やす。
五味子(ごみし)…無駄な発汗を抑え、津液しんえき(水分)の消耗を防ぐ。

生脈散という処方名は、「身体のエネルギーや水分の消耗を防ぎ、弱くなった脈を回復する」働きを意味しています。大量の発汗や肉体疲労で消耗した全身の機能低下を改善します。

どういう時に使う?

エネルギー(気)と水分(陰)が不足している状態(気陰両虚きいんりょうきょ)に用います。こうした状態は汗をかき過ぎた時に起きやすく、夏バテの諸症状(倦怠感・食欲不振等)に良く効きます。

前回ご紹介した五苓散(「我が家のクスリ箱① 五苓散の使い方」)が急性期に頓服で用いられることが多いのに対して、滋養に継続して服用することが多い漢方薬です。

同じく気陰両虚の方剤に清暑益気湯せいしょえっきとうがあります。清暑益気湯は生脈散をベースに気やけつを補う生薬(黄耆おうぎ当帰とうき)等が加えられた方剤です。
漢方薬は構成する生薬の数が少ないほど効き目がシャープといわれています。
先ずは生脈散を試す、症状が続くなら補気・補血作用の加わった清暑益気湯を用いるのも良いでしよう。
また、生脈散はOTC(一般用)医薬品のみ、清暑益気湯は医療用医薬品のみの取り扱いです。
単純に自分で買うなら生脈散、病院でもらうなら清暑益気湯…でも良いかと思います。

ただし、同じ夏バテでもクーラーで身体を冷やし過ぎてだるい・冷たいものを摂り過ぎて食欲不振…といった場合は、補中益気湯や六君子湯が適しています。(「漢方薬で夏を乗り切る!」)
生脈散や清暑益気湯を使うポイントは「暑さ」と「汗」と覚えておくと良いでしょう。

最後に…我が家の場合

我が家では夏場にストックしておく漢方薬です。

汗かきで胃腸の弱い(ついでに痩せ型。漢方でいうところの気虚ききょタイプ。)夫、「汗でビショビショになる夏は大嫌い」だそうです。なのに、仕事の都合で外出続きになると消耗しきって帰ってきます。とにかく身体が重いようで。
そんな時に生脈散です。使っている生脈散は「1日2回」ですが、外出が多くなると予想される前後で1日1回の服用を続けていると身体が楽だそうです。

暑熱順化でしょうか、息子は夏休み半ばを過ぎる頃には「五苓散、頂戴」と言わなくなります。ですが、汗だくになる部活(着替えのTシャツの枚数も半端ない)が続くと、「今日も部活か…。だるい…。」となります。
そういう時にも生脈散が良いようです。

梅雨が終わって連日猛暑の頃、母から電話がありました。「畑の草抜きを頑張り過ぎた。熱中症だと思って五苓散を飲んでいるけれど、すっきりしない。」と。
そこまで頑張らないでよ!と思いつつ、生脈散をすすめたところ「あれ、良かったわ」と。
・・・それは良かった。水をさばく方剤から補う方剤に変えて著効した例だと思います。

8月も下旬です。残暑が厳しい中でも秋への準備が必要な時期になってきました。
湿邪や暑邪で脾胃を傷めやすい夏から、燥邪(乾燥)で肺を傷めやすい秋へと移り変わります。
夏に失われた潤いやエネルギーをしっかり補って、秋に備えたいですね。
…生脈散、良い薬です。

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