患者な薬剤師⑥ ~目のトラブル編 その目のカユミは何のせい?~

薬局から

若い時分、ドクターとお話するのは問い合わせの電話対応やMR同行(製薬会社時代)であったり、疑義照会(薬局で←「薬剤師って…」参照)の時でした。
年を重ねるようになって、自分や家族が受診する際にドクターと話す比率が増えてきました。
当然、仕事での会話と患者やその家族としての会話は、話す内容も違えば、感じ方も違います。

今回は目のかゆみのお話です。

コンタクトレンズ卒業後の目の調子は…

コンタクトレンズをやめて(諦めて?)2年近くになります。やめた原因はアレルギーと老眼…。(「患者な薬剤師⑤〜さよならコンタクトレンズ編 あるいは眼のアレルギーのお話~」)」)
予想通り、目の充血や目やには圧倒的に減りました。メガネの不便さにもボチボチ慣れ(このお話はまた別の機会に)、コンタクトレンズを懐かしむことなく過ごす毎日です。
ですが、最後まで残ったのは目のかゆみです。

花粉のアレルギーもあるので仕方ないと思っていたのですが…。

「アレルギー!」と決めつけてない?

緑内障もち?なので(「患者な薬剤師① ~緑内障編~」、「患者な薬剤師② 〜緑内障編その2~」)眼科にはルーチンでお世話になっています。
それとは別で目のかゆみ等のトラブルを受付で訴えた時のこと…。診察室に入った途端に医師が一言。「アレルギーだもんね〜」
いやいや、ちゃんと診てから言ってよ、医師せんせい…。
昔、「風邪ひきました」と言ったら「それを決めるのは私だ!」と怒る内科医いたっけ…。
思い込みで診察しないで欲しいなと思いつつ、別の病気の可能性も少なく、軽く心の中でツッコミ入れる程度でした。

でも、外出してる時よりも家の中の方が目がかゆいのです。掃除の時は平気なので、ハウスダストのアレルギーとも思えません。
しかも、一番辛いのは寝起きだったり。それを伝えると医師せんせいはまた一言。
「日によって違うからね〜」
さりげなくスルーしたね、医師せんせい…。

そんな話を親しい薬剤師にしていると、「それ、ドライアイじゃない?」と言われました。

ドライアイだって「かゆい」

ドライアイは、目を守るのに欠かせない涙の量が不足したり、涙の質のバランスが崩れることによって涙が均等に行きわたらなくなる病気であり、目の表面に傷を伴うことがあります。いわばドライアイは涙の病気といえます。高齢化、エアコンの使用、パソコンやスマートフォンの使用、コンタクトレンズ装用者の増加に伴い、ドライアイ患者さんも増えており、その数は2,200万人ともいわれています。

参天製薬ホームページより

そう!目の表面が乾いてくると角膜に小さなキズがつきます。多くは痛みを感じますが、かゆみを感じることもあるのです。
また、涙が均等にいきわたらないことによりバリア機能が働かなくなるので、外からの刺激(花粉やハウスダスト等)に弱くなり、かゆみを増悪させます。

そして、目はまばたきをして涙を行き渡らせ表面を潤しています。まばたきをしない寝ている間は、涙(水分)が不足しがちです。
当然、寝起きは目が乾いた状態となり、ドライアイの諸症状(目の乾き・目が痛い・目がゴロゴロする・見えにくい・目がかゆい等)があらわれやすくなります。

…そう、まさに私の症状です!!

さて、医師にどう話す?

緑内障の定期検診は、まだ先です。(わざわざ受診するのが面倒です…。ちょっと暴言。)
何より、アレルギーと思い込んでいる(間違いではないけれど)医師にクドクド説明するのが悩ましいです。(「風邪と決めるのは私だ!」という内科医の例もあるので面倒です…。さらに暴言。)

結局、先ずはOTC(一般用医薬品)でドライアイ対策をすることにしました。
すると、すこぶる調子が良く、アレルギーの目薬をし忘れる程です。

そこで次の受診日に…。
「アレルギーはどう?」と言う医師に「目も乾くし、市販の薬でドライアイ対策したのですが、それでかゆみもなくなりました。」と答えました。
「まあ季節的に(まだ冬でした)乾くよね。ちょっと目の表面をみてみよう。」と、いつもと違う言動の医師。
「表面に小さな傷があるね。ここで目薬だせるから、それを使って。」と。
…ミッション完了です。

誤解のないよう、お伝えしたいのですが、私が今回とった対応は決してベストではありません。
きちんと医師に説明して相談することは、とても大切です。
「風邪と決めるのは私だ!」という内科医は、間違っていません。特にインターネットの普及で情報過多な昨今、患者さん自身が病名にあたりをつけて受診し、それと違う場合に医師が対応に苦慮することもあります。同じようなケースで薬局でも「この薬はネットで…」と持論を展開する人がいらっしゃいます。

勿論、私の場合もそうですが、緊急を要さないなら市販の薬で様子をみるのも一つの選択肢です。
それで良くならなければ受診は当然です。が、良くなったということは、その薬の効能として挙げられている疾患の可能性が高いということです。繰り返して起きる症状であるならば、一度は受診を考えていただきたいです。

最後に…薬剤師の視点から

ドライアイの治療方法は、点眼治療が中心となります。
点眼には、水分を与えるタイプと涙の成分の分泌や産生を促すタイプの目薬があります。


水分を与えるタイプには人工涙液とヒアルロン酸剤があります。ヒアルロン酸製剤は涙の安定性を高めて目に水分を与えるとともに、目の表面の傷(角膜障害)を改善する効果もあります。
私が試してみたのも、これです。
両剤とも、OTC(一般用医薬品)として販売されていますが、ヒアルロン酸製剤(ヒアレイン®S)は「要指導医薬品」なので、薬剤師の説明を受けてからの購入となります。


涙の成分の分泌や産生を促すタイプには、ジクアホソルナトリウム(ジクアス®点眼液)やレバミピド(ムコスタ®点眼液)があります。比較的新しい点眼薬で、以前から使われていた人工涙液やヒアルロン酸製剤に比べて目の不快感や眼表面の状態を改善する効果が高いといわれています。


これらの点眼薬の特徴は点眼回数が多いということです。人工涙液とヒアルロン酸剤は1日5-6回、ジクアス®点眼液は1日6回、ムコスタ®点眼液は1日4回です。
「なかなか良くならない」と話される患者さんの中には、点眼回数が少ない方が多いです。決められた点眼回数を続けてもらうことが大切です。
点眼回数が従来の6回から3回となったジクアス®LX点眼液も登場しました。ライフスタイルに合わせて使っていただければと思います。

また、目が乾きやすい動作や環境によって症状は悪化します。
パソコンやスマホの長時間の使用は控えましょう。使用している時は、じっと画面を見つめがちです。意識してまばたきをするようにしましょう。お子さんのゲームについても同様です。子どもの4人に1人がドライアイの可能性があるともいわれています。
エアコンの風が直接あたらないようにして、乾燥から目を守りましょう。
睡眠不足はドライアイを悪化させます。夜更かしは程々に。
軽症だと、生活習慣や環境を変えるだけで症状が改善することもあります。

ドライアイで花粉症が悪化したり、花粉症とドライアイを併発していたりするケースもあります。
いつもの目薬を使っても調子がイマイチ…な時は、眼科を受診しましょう。

今回は、「アレルギーと決めつけた」眼科医への辛口発言ありの投稿になってしまいました。
ですが、”決めつけ”や”思い込み”は薬局でも多々あります。
処方箋に書かれた、この薬だったら疾患は○○…。
この薬を飲んでいる人は、きっと○○…。
決めつけや思い込みにとらわれることなく、患者さんのお話に耳を傾けていきたいと思います。

ご紹介した点眼剤のラインナップは2023年4月現在のものです。
今回の記事は参天製薬ホームページの内容を参考にいたしました。

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