我が家のクスリ箱③ 銀翹散・桔梗湯の使い方

漢方

コロナ禍でセルフメディケーションの意識が高まったと言われています。緊急性の低い症状は市販薬を使って経過を見る、必要に応じて受診する・・・そうした工夫を身につける事が大切だと思います。
応急処置に使う救急箱に常備するお薬は家族誰もが使えるもの、汎用性の高いものが理想です。そうした意味でも漢方薬はおすすめです。

以前に救急箱に入れておくとよい漢方薬をご紹介しました。(「救急箱にも漢方薬を 常備しておきたい漢方薬は?」)我が家の救急箱にも漢方薬がいくつか入っています。今回は「銀翹散ぎんぎょうさん」と「桔梗湯ききょうとう」のお話です。

クラシエ銀翹散
ツムラ桔梗湯

どんな薬?

桔梗湯は喉の腫れを改善する桔梗ききょうと炎症を和らげる甘草かんぞうの2剤で構成されたシンプルな方剤です。
銀翹散は、この桔梗湯に清熱せいねつ(熱を冷ます)作用のある薄荷はっか牛蒡子ごぼうし金銀花きんぎんか等の生薬が加わっています。
桔梗湯は喉の痛みや炎症に対処的に使うのに対して、そうした症状の原因(熱邪)を取り除く清熱の作用が加わっているのが銀翹散といえます。
桔梗湯は医療用医薬品(医師に処方してもらう)、一般用医薬品(薬局・ドラッグストアで購入)両方での取り扱いですが、銀翹散は一般用医薬品(薬局・ドラッグストアで購入)のみです。

どういう時に使う?

銀翹散は、喉が痛くて発熱している、熱っぽい…という「赤い風邪」(熱証の風邪)のファーストチョイスです。苦い薬ですが、溶かしたものを「ガラガラ」とうがいしながら飲むと効果的です。
2~3日のうちに良くなることが多いです。良くならない場合や「唾を呑み込んでも喉が痛い」「喉が痛くて食事ができない」「呼吸音がおかしい(犬の遠吠えのような…子供に多いクループ症候群の可能性があります)」…という場合は迷わず受診を。

ちなみに、銀翹散と同じように使われる漢方薬に駆風解毒湯くふうげどくとうがあります。構成生薬も似通っています。
ドラッグストア等で購入する時は、その場にある方で良いかと思います。


同じ風邪でも発熱の有無に関わらず寒気がするような「青い風邪」(寒証の風邪)には葛根湯が良いかでしょう。
寒証の風邪には他にも桂枝湯や麻黄湯等があり、症状に応じて使い分けられます。
医療用医薬品としての漢方薬は古方派を主とする日本漢方の方剤が多く(「中医学事始め① ~漢方いろいろ~」)、「青い風邪」のラインナップは豊富です。半面、銀翹散が医療用にないことからもお分かりのように「赤い風邪」には弱い感じがします。

寒と熱(青い風邪か赤い風邪か)がハッキリとわからない場合もあります。「喉がおかしくて、ちょっと寒気がする」「熱っぽい気がするけれど、肌寒い」・・・等、人の身体は単純にはできていないようです。
そういう場合は寒熱を選ばない桔梗湯が使いやすいです。銀翹散と同様、溶かしたものを「ガラガラ」とうがいしながら飲むと効果的です。苦味は少なく、甘草の甘味で飲みやすい漢方薬の一つです。

※ここでお話した「寒熱」とは「証」(体質と症状を合わせた身体の状況)の一つです。病状を「寒冷」・「温熱」で区別しますが、体温以外の要素も含まれます。「証」については、別の機会でお話できればと思います。

最後に…我が家の場合

我が家では桔梗湯を常備していました。
飲みやすい味で、「ぬるま湯に溶かしてガラガラごっくん」が小さな息子でも可能だったからです。
銀翹散で「飲んでみようよ〜」「ヤダ!」のバトルを避けていた訳です。ただ、漢方薬の服用自体(普通に水で飲む)で苦労した事はなかったので、「溶かしてガラガラしながら飲む」ことに拘らず、銀翹散を普通に飲ませても良かったかなと、今では思っています。
後日、喉の痛みで息子に“銀翹散でうがい”をすすめたところ、「不味いけど、我慢できないほどでない」と。漢方薬が苦じゃない息子に育ったようです。

今のところ、「熱邪には銀翹散、寒邪には葛根湯か桂枝湯」のつもりで常備しています。
新型コロナの症状である「喉の痛みと発熱(寒気はない)」は熱邪によるものと考えられます。新型コロナに関わらず、「あれ?」と思った時に「先ずはこれで様子をみよう」と対処できる薬が救急箱に入っていると安心です。

…銀翹散・桔梗湯、良い薬です。

コメント

  1. 私も桔梗湯と銀翹散は常備してます(^.^)
    桔梗湯はちょっと喉痛い時、銀翹散は激しく痛い時って感じで使ってます(笑)
    知人の先生には銀翹散は冬にあまり使わないでって言われましたが、炎症のような喉の痛みは冬に多いのでガンガン使ってました(^-^;
    でも、最近は銀翹散を使うほど痛いことはないので、桔梗湯だけでなんとかなってます(^^)/

    それにしても、銀翹散、どうして医療適用してくれなかったんでしょうね…。
    いい薬なのに~~。

    • 薬剤師A 薬剤師A より:

      コメント、ありがとうございます!
      上手に使ってらっしゃるのですね(^o^)私も喉がおかしくて酷くなると嫌だな…という時は桔梗湯です。これだけで解決することも多いです。
      銀翹散は冬に△…なのは、冷やす生薬が多いからでしょうか。いずれにしても、連用する薬ではないですね。
      私も痛み止め・トローチ・うがい薬…の処方箋を仕事で見る度、銀翹散が医療用なら選択肢が増えるのにと思っています。