突然ですが、この独特?な植物は…。
前回ご紹介した(「しくじり漢方⑨ 漢方薬の使い方は多種多様…患者さんが釣藤散の服用を躊躇した訳」)釣藤散の主役となる生薬、釣藤鈎の基原植物、カギカツラです。
葉の根元にあるカギ状のトゲを生薬として用います。
釣藤鈎には鎮痙・鎮静作用があり、釣藤散の他、抑肝散にも含まれています。
カギカツラを初めて見ることができた場所は、田村薬草園。
古くから薬草と関わりの深い奈良県にある田村薬品工業さんの薬草園です。
名前だけしか知らない、写真で見ただけ…の生薬の基原植物が盛り沢山。
例えば、チョウセンアサガオ。
世界初の全身麻酔手術を行った華岡青洲が配合した麻酔薬の成分です。(「華岡青洲を初めて知った本…「華岡青洲の妻」」)
毒性が強く、誤食による食中毒も報告されています。
そして、トリカブト。
昔々にワイドショーで騒がれた有毒植物ですが、附子と呼ばれる生薬になります。
鎮痛・強心作用があり、八味地黄丸などに含まれています。
匙加減で毒にも薬にもなる、典型例です。
根の部分を用いるのですが、葉も毒性があるので、要注意。誤食による事故も報告されています。
トリカブトとの誤食事案とまではいかないですが、同じキンポウゲ科の黄連の葉もよく似ています。
健胃・消炎作用があり、黄連解毒湯や半夏瀉心湯などに含まれています。
附子も黄連も生薬(根の部分)は学生の頃から目にしていますが、葉を見比べたのは初めてでした。
毒の話になってしまいましたが、その他にも様々な草木を見せていただきました。
先ずは桔梗。
使われるのは根で、去痰・排膿作用があります。桔梗湯が有名ですね。(「我が家のクスリ箱③ 銀翹散・桔梗湯の使い方」)
これは麻黄。
発汗作用・鎮咳作用・鎮痛抗炎症作用があり、葛根湯(「我が家のクスリ箱⑤ 葛根湯の使い方」)や小青竜湯(「しくじり漢方④ えっ?この咳も小青竜湯?~小青竜湯の“証”を考える~」)などに含まれています。
そしてキハダ。
樹皮は黄柏と呼ばれる生薬になります。
消炎・健胃・清熱作用があり、黄連解毒湯や清暑益気湯(「漢方薬で夏を乗り切る!」)に含まれている他、陀羅尼助丸などの多くの胃腸薬に使われています。
…興味深いものばかりで、エンドレス状態です。
その数、実に約550種(薬草約370種・薬木約180種)。
訪れたのは5月半ばで、ギリギリ芍薬の花も咲いていました。
芍薬の薬用部位は根の部分なので、収穫する場合は、蕾のうちに刈り取ってしまいます。
鎮痙・鎮痛作用があり、こむら返りの妙薬として有名な芍薬甘草湯(「我が家のクスリ箱⑧ 芍薬甘草湯の使い方」)に含まれています。
四季折々で別の風景を見せてくれる薬草園、また訪れたいです。
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