漢方の視点から自分の体質を考えよう〜自分に合った健康法を〜

漢方

巷には「健康に良いもの」の情報が溢れかえっています。
・運動しよう
・水を1日2リットル飲もう
・〇〇を食べよう

…きっと、どれも正解でしょう。
ですが、果たして自分自身にとっても正解なのでしょうか。
・元々体力がないのに、激しい運動をして消耗してしまった。
・胃腸が弱いのに水を摂り過ぎて、浮腫んだり、下痢をした。
・同じ食べ物を食べ続けて、胃腸の不調を招いた。

…健康法としては正しくても、体質に合わない健康法は、かえって不健康です。
体質は人それぞれ。同じ健康法で良い筈がありません。

先ずは、自分の体質を知る事が大切です。
自分の体質を知ることは不調をなくす近道で、対策をたてやすくなります。

今回は漢方の視点から不調の体質タイプを考えていきましょう。

漢方の基本は“中庸”

中庸とは「過不足なく偏りのない状態」を意味します。
漢方では身体を構成する“けつすい”や“陰・陽”のバランスが崩れ、中庸を保てなくなった時に不調があらわれると考えます。

※“陰・陽”については「中医学 事始め② 〜世界は陰陽五行でできている?〜」を
“気・血・水”ついては、「中医学 事始め③ 〜人の身体は気・血・水で動いている?(気血水弁証)〜」をご参照ください。

この考え方から、不調が起きる体質タイプは大きく2つに分かれます。
・足りないタイプ
・多過ぎ・偏り過ぎて、滞っているタイプ
…です。

そして、改善策も大きく分けて2つです。
・足りない場合は、補う。
・滞っている場合は、流す。
…いたってシンプルな考え方です。

順番にみていきましょう。

陰陽太極図

足りないタイプ…気虚・血虚・陰虚・陽虚

“気”が不足しているタイプ:「気虚ききょ体質
“気”(≒エネルギー)の不足で、「元気がない」「覇気がない」状態です。

こんな方は気虚体質かも…
□疲れやすい
□風邪をひきやすい
□朝起きられない
□集中力がない
□汗をかきやすい
□胃腸が弱い・下痢しやすい
□食後に眠くなる

気が不足しているので、体を温めることができず、冷えを感じることが多いです。
陽虚や血虚の原因になることもあります。

こんな方が激しい運動で沢山汗をかいてしまうと、汗と共に気が流れてしまうので、消耗してしまいます。
胃腸の弱い方も多いので、水分の摂り過ぎ等、食事の仕方でさらに不調や疲労感につながってしまうので注意が必要です。

気虚の方の健康法は、気を補う(補気ほき)ことです。
疲れをためないこと、睡眠時間を十分にとって寝不足に注意することです。
食事はよく噛んで、食べ過ぎに注意しましょう。米類・芋類・カボチャ・クリ…がオススメです。

“血”が不足しているタイプ:「血虚けっきょ体質
心と体の栄養となり潤いを与える”血”が不足している状態です。

こんな方は血虚体質かも…
□めまいや立ちくらみがする。
□抜け毛や白髪が増える
□不安感が強い
□眠りが浅い
□夢をよくみる
□乾燥肌
□爪がわれやすい

生理や出産などで血を消耗する女性に多いです。
血が不足すると体だけでなく、精神状態や思考にも影響を与えます。理由のない不安感や考えがまとまらなくなります。頭や神経を使うこと自体が血を消耗するので、更に考え過ぎ・悩み過ぎにおちいってしまいます。

血虚の方の健康法は血を補う(補血ほけつ)こと、血の消耗を防ぐことです。
血が作られるのは夜です。睡眠を大切にして、夜更かしを避けることが大切です。
カツオ・鮭・人参・小松菜・ブドウ…がオススメです。

“陰”が不足しているタイプ:「陰虚いんきょ体質
“陰”とは、体のほてりを冷まして潤いを与える“水”(津液しんえき)のこと。この陰が不足して、体に熱がこもっている状態です。

こんな方は陰虚体質化も…
□喉がかわきやすい
□手足や顔がほてりやすい
□目や唇が乾燥する
□寝汗をよくかく
□暑がり・微熱っぽい
□尿量が少ない
□動悸がする

こんな方が「健康に良いから」とサウナやホットヨガで大量に汗をかいてしまうと、さらに潤いが失われて熱がこもってしまいます。
そして、陰を養うのは夜の睡眠中。夜更かしは陰を消耗させます。
また、加齢によっても陰は失われていきます。更年期症状の原因でもあります。

陰虚の方の健康法は陰を補う(補陰ほいん)ことと、補血。
早めの就寝が大切です。スマホやパソコンの使用を最低限に。
果物・豆腐・蓮根・蜂蜜・卵・豚肉…がオススメです。激辛食材は避けましょう。

“陽”が不足しているタイプ:「陽虚ようきょ体質
“陽”とは熱を生み出す力のこと。この陽が不足して、体全体が冷えて機能低下がみられる状態です。
気虚に冷えが加わって、より深刻化した状態でもあります。

こんな方は陽虚体質かも…
□寒がり
□顔色が青白い
□寒い日やクーラーで不調になる
□夏でも温かい物が欲しい
□下半身が冷えやすい・お腹や腰まわりを触ると冷たい
□トイレが近い
□動悸や息切れがする

陽虚は、生まれながらに熱を生む力が弱い(腎精じんせい不足)、加齢、筋肉量の不足によって引き起こされます。

こんな方が「冷やさぬ方が健康によい」と、カイロで体を温めてじっとしているだけでは、温めることに体が慣れてしまい、自身で熱を生み出しキープができなくなってしまいます。(勿論、温めることは大事ですが、その先の工夫が必要です。)

陽虚の方の健康法は陽を補う(補陽)こと。
温めた後の保温に心がけます。特に首・手首・足首を冷やさないように。
じっとし過ぎず、軽い負荷でよいので筋肉を増やす運動習慣をもつことが大切です。
卵・大豆・鶏肉・エビ・山芋・ニラ…がオススメです。胃腸に問題がなければ、朝ご飯はしっかり食べましょう。

滞っているタイプ…気滞・瘀血・水滞

“気”が滞っているタイプ:「気滞きたい体質
“気”(≒エネルギー)の流れが滞っている状態です。気鬱の状態ともいえます。

こんな方は気滞体質かも…
□イライラしやすい
□涙もろい
□寝つきが悪く、途中で目が覚める
□喉がつかえるような感じがする
□げっぷ・おなら・ため息が多い
□下痢や便秘を繰り返す
□緊張やストレスで不調になる

頑張り過ぎている人に多いタイプです。我慢をしてしまうことも原因の一つです。
こんな方が「健康には○○すべき」と節制してしまうと逆効果になることも。
お腹が張りやすい、ガスが溜まりやすいことが多いので、一般的に体に良いとされる豆類の食べ過ぎも要注意です。

気滞の方の健康法は気を巡らす(理気りき)ことです。
先ずは、自分のことを後回しにしないこと。体を動かす・音楽を聴く・ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる…等、リラックスできることを見つけるとよいでしょう。
香りのあるものは気の流れを良くするといわれています。アロマも一つの方法です。
シソ・セロリ・春菊・ミント・ジャスミン・柑橘類…がオススメです。

“血”が滞っているタイプ:「瘀血おけつ体質
血の巡りが悪くなっている状態です。

こんな方は瘀血体質かも…
□顔色がくすみがち
□目の下クマができやすい
□シミやアザができやすい
□局部の肩こり・頭痛がある
□手足が冷える
□生理痛がひどく、経血に塊がある
□ゴツゴツしたニキビ跡がある

血の巡りが停滞すると痛みの症状がでやすくなります。その場合の痛みは、ズキズキするような強い痛みのことが多いです。子宮内膜症や子宮筋腫も瘀血の症状の一つです。
食生活の乱れや運動不足が瘀血を招く原因になります。

瘀血の方の健康法は血を巡らせる(活血かっけつ)ことです。
体を意識して動かし、同じ姿勢でいたり立ちっぱなしは避けた方がよいです。
体を冷やさないようにすることも大切です。
玉ねぎ・ニラ・ネギ・ニンニク・青魚…がオススメです。

“水”が滞っているタイプ:「水滞すいたい体質
余分な水が体に溜まっている状態です。

こんな方は水滞体質かも…
□全身が重だるい
□手足がむくみやすい
□めまいや立ちくらみがする
□胃がむかむかしやすい
□雨の日に不調になる
□車酔いしやすい
□鼻水がよくでる。

水分代謝が悪い状態ともいえます。
「水太り」といわれる方は、このタイプに当てはまることが多いです。
塩分・糖分の摂り過ぎや冷えで引き起こされます。
“気”と“水”は密接な関係ですので、気滞が原因になることもあります。

水滞の方の健康法は水をさばく(利水りすい)ことです。
お風呂や運動で汗をかくとよいです。
水分は一度に沢山摂らず、こまめに摂るようにします。お酒も程々に。
ゴボウ・白菜・海藻類・キノコ類・ハト麦…がオススメです。

まとめ

漢方の観点での体質についてお話しました。
体質は一つとは限らず、混合していることが多いです。
本来の体質は複雑ですので、「こんな傾向にあるんだな」と参考程度にしていただければと思います。

このように自分の体調や生活のあり方を見つめて体質を判断し、健康の為の方向性をみつけていくのが“養生”です。

養生とは、文字通り「命を養う」ことです。
体質に合った養生で、自分にとって丁度良い、健やかな毎日を…。

コメント